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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年6月17日付け

 東京の秋葉原は「電器の町」でフアンが多い。日曜日の8日も買い物客が押し寄せ人気の高さを誇ったのに―起きたのは凄惨な殺人事件である。秋葉原駅近くの歩行者天国にトラックが突っ込み通行人を次々に跳ね飛ばした。さらに運転していた男がナイフを手に降りてきて人々の腹や胸を刺す悪魔のような凶行を続ける▼殺傷能力が高いというダガ―ナイフで刺殺されたのは男3人と東京芸大の女子学生1人の4人。車に突き飛ばされ男性3人が死んだ。事件現場はブラジルのテレビも放映したし、英国やその他の国のマスコミも大きく取り上げ報道している。犯人の加藤大容(25)は派遣社員として自動車工場で働いていたが、リストラや処遇に不満だったらしい▼それがどうしてこんな凶行に走ったのか。どんな人にも不満はある。そんな世の中とぶっつかり合いながら生きるのが普通なのに「人を殺すために秋葉原にきた」「誰でもよかった」と警察に自供している。今年3月に茨城の土浦で8人を殺した若い男も「多数を殺せば死刑になる」とし「誰でもいいんだ」と語る▼もし―日本の若者たちに、こうした考え方が共通しているのであれば真に怖い。こんな破滅思想は大いなる誤りだし、非難されても致し方ない。加藤大容の父は青森の家で「本当に申し訳ありません」とお詫びし、母は泣きながら崩れ落ちたと新聞は伝える。ご両親の痛手はよくわかるけれども、このところ10代の後半から20代の始めの無差別殺人が増えているのはどうしたことか。もっともっと事件の背後にあるものを突き詰める必要がありそうだ。(遯)

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