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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年6月20日付け

 皇太子さまが、きのう着聖された。二十六年前、二十二歳のとき一度ブラジルを体験され、今度四十八歳の壮年になられて二度目の訪伯である▼出発前、宮内記者団との会見の席上、かなり突っ込んだ質問をお受けになった。デカセギが日本国内の労働力の一部を担っていること、そのデカセギと日本人との共生、妃殿下とご一緒しない、一人訪問を決めた判断理由などについてである。ご訪伯が単に「皇室外交」とか「儀礼」にとどまっていないことを示す証左である▼ブラジルに関しては、七歳のときのサッカー日伯戦観戦で興味を持たれたという。以後、親伯・知伯の天皇皇后両陛下から、日本移民の労苦や貢献について、さまざまうかがってこられたそうだ▼皇后さまは六七年、皇太子妃であった三十二歳のとき初ご訪伯、翌六八年の歌会始お題「川」で移民に寄せる思いを詠まれた。「赤色土(テーラロッシャ)つづける果ての愛(かな)しもよアマゾンは流れ同胞(はらから)の棲む」。この歌を見、在伯一世はすっかり皇太子妃ファンになった▼両陛下は、それからずっとブラジル日系人を気にかけておられる。去る四月には、群馬県内でデカセギたちの現状を視察になられたばかりだ。今回は日本にあって在伯日系人が幸せであるよう祈りたい、といわれている▼皇太子さまが今年、日本伯交流年の名誉総裁をお受けになったのは何か期すものがあったと思われる。成果を上げられるよう願い、歓迎の気持は態度で表わしたい。(神)

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