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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年6月28日付け

 落書きを辞典で見ると「門、壁など本来書いてはいけない所にいたずら書きをすること」とし、「楽書き」とも―とある。幼い子どもらが、白墨やクレオンで襖や障子に絵などを書き付けるのはよくあることだが、小学校も高学年ともなれば、こんな馬鹿げた稚気とはおさらばする。まして―寺の門や壁への書き捨てなど、やってはいけないのが世の決まり▼こんな常識も今やさっぱりと捨て去られたらしい。岐阜市立女子短大と京都産業大学の学生らがイタリア・フィレンツェの世界遺産「サンタ・マリア・デル・フィオ―レ大聖堂」に油性ペンで落書きしたのだから驚く。どちらも戦後に設立された大学だが、この幼稚さには呆れ返るしかない。「岐女短」や仲間6人の名前を堂々と大理石の壁に書き残す恥知らずな女学生であり、もう何と評すべきなのか?▼岐女短大が2月の28日。そこへ3月13日にやって来た京都産大生が、これまた「イタリア旅行記念」「京都産業大学」とやはり油性ペンで書きなぐる。この無様で無学な学生らをいくら朗らかなイタリアっ子でも、決して褒めたりはしまい。短大生たちは「初めての研修旅行だったので記念に書いた」と語っており―余り反省の気持ちもないらしい▼これではいけないと短大の松田之利学長は「現地に謝罪訪問も行う」としているが、学生らに―この心の痛みがわかるのかどうか―である。大聖堂では「謝罪して貰えれば責任は問わず、修復の費用負担も不要」を表明し寛容な姿勢を示しているけれども、この学生らの不埒な行為が大きな「落書き事件」に発展しないのを祈るだけである。 (遯)

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