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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年7月26日付け

 ナチを率いたヒトラーのホロコーストは20世紀最大の汚点とされ今も非難される。何しろ600万ものユダヤ人を虐殺した歴史的な大スキャンダルだし弁解の余地はない。ロシア帝政の反ユダヤ主義もかなり強くボグロムという大量殺害や破壊活動が盛んであったのも事実だし、現在でも民族抗争は多い。チベットもだし、あのボスニア・ヘルツェゴビナ紛争も3つの民族が血と血を流した好例といっていい▼ユーゴ国際戦犯法廷(オランダ・ハーグ)がジェノサイド(民族大虐殺)の疑いで行方を追っていたカラジッチ氏をやっと拘束したが、92年から95年まで続いたあの内戦はまったく悪夢のようなものだった。カラジッチ氏が指揮したスレブレニツァの大虐殺はまったくひどいものであり、国際的な批判も強く、NATOが空襲作戦を取るほど緊張もした▼セルビア人の指導者であるカラジッチはムスリム人の殲滅を目的にし、何の罪の無い市民たち8000人超を殺戮し、戦犯法廷はこの暴挙を「ジェノサイド」と決め付け、その責任を追及している。カラジッチ発言で最も知られるのは「民族浄血」であろう。セルビア人の兵士らがムスリム人の女性を強姦し、子を産ませるの粗暴極まりない行為である▼こんな悪逆非道な言動は第2次大戦後の最悪の事態とされる。だが、セルビア人のカラジッチ人気は高く、戦犯法廷への引渡しに反発する勢力がいっぱいなのも気になる。同じようなケースで2003年にはジンジッチ・セルビア共和国首相が暗殺されるの事件もあるし、ユーゴ解体後の騒ぎはまだしばらくは続くのではあるまいか。 (遯)

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