ホーム | 日系社会ニュース | ふるさと創生協会=帰国後は日伯の架け橋に=地域リーダー20人が帰国

ふるさと創生協会=帰国後は日伯の架け橋に=地域リーダー20人が帰国

ニッケイ新聞 2008年8月2日付け

 七月十八日からブラジル国内で実施された「二十一世紀の日伯地域リーダー交流事業」で来伯した参加者の送別会と反省会が、滞在最終日の二十五日、サンパウロ市内のニッケイパラセホテルで行われた。
 今回十一県から参加した二十人は、ホームステイを受入れてくれた各県人会関係者をはじめ、受入れのために奔走したブラジルふるさと創生協会の関係者に感謝の意を表し、今後の日伯の架け橋になることを約束した。
 特定建設業(株)栄組常務取締役の佐々木栄洋さん(37)は岩手から参加。約二十年前に日伯交流協会生として、ブラジルに滞在していたことを話し、「今回訪れたのは、珍しい場所ばかりで良い経験になった。菊地義治副会長の『できないことは何もない』との志を持って、日伯の間でこれからも活動していきたい」と感想を語った。
 愛媛から参加した南流勢運輸社長の矢野隆志さん(59)は「今回は、なるべく多くの人の苦労話を聞きたくて来伯した。私が日本で想像していた苦労は、ブラジルでは感じられなかった」と驚きながら話し、「色々と感謝することが多い滞在だった」と関係者へ謝意を表した。
 ベルタ株式会社代表取締役の河本義方さん(39、山口)は「自分の目で見て、感じたブラジルを日本の人たちに伝えたい」と帰国後の目標を語り、「若くて社会の一線でがんばっている人たちと交流がしたかったし、意見交換をしたかった」と意見を述べた
 最後に、ふるさと創生協会の菊地副会長は「今回の訪問で各自、責任を充分感じるものだったでしょう。(交流は)小さいものだが、今後に繋がるようなものにしてほしい」と今回の事業を振り返った。
 反省会の後には歓談が行われ、参加者はブラジル滞在の最終日を楽しんでいた。
 一行は二十五日に離伯した。

■記者の目■地域リーダー事業=「もっと若者交流を」との声も=将来担う人材育成は重要

 「本当に将来を目指した交流事業だったのか」。百周年を記念し、七月に日伯交流の活性化を目指して行われた「二十一世紀の日伯地域リーダー交流事業」では、日本側の参加者から冒頭のような厳しい意見が聞かれた。日伯関係の次の百年を支える人材を育成する事業として、非常に重要なものであり、それゆえに惜しむ声があちこちで聞かれた。
 同事業は「今後の日伯両国の経済・文化交流の拡大と、友好親善を深めるために重要な事業」との位置付けだ。そのため、日本側の参加者の多くは、ブラジル社会で頑張っている二世や三世、四世たちとの交流会が中心事業と考えていた。
 しかし、サンパウロ市やリオ、ブラジリアの各地で行われた交流会には、平日だったこともあり、一線を退いた一世が多く参加していた。
 参加者からは「移民で来られてすごく苦労したのは分かるし、勉強になることが多かった。でも今回の趣旨は、将来を目指した交流事業なのでは」と首を傾げる人も。
 「ブラジルに来る機会がなかったから初めて来られて良かったし、現地の生活を見られるホームステイは楽しかった。でも、募集時の趣旨と実際に開催された内容が違うような気がする」との不満をもらす人もいた。
 その他には「今回のような交流会ならば、各県の国際交流課の人間を送ったほうがまし」と厳しい意見も聞かれた。
 募集期間も短く、予定されていた五十人を大きく下回る二十人しか集まらず、構想通りの体制が組めなかったのは残念なことだ。さらに内容に関しても、将来を目指した交流を目的に置いているのならば、ブラジル側は一線でがんばっている若い人たちの比率を高めた交流会でもよかった。
 母県側の理解を深めるための働きかけはもちろん、より良い形になるような試行錯誤を続け、様々な年代との交流ができる形にしていって欲しい。(貴)

image_print