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商議所昼食会=『実るほど頭を垂れる稲穂かな』=斉藤空軍大将、リーダー論語る

ニッケイ新聞 2008年8月21日付け

 ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)の八月の定例昼食会が十五日正午から、ホテル「グランド・ハイアット」で開かれ、斉藤準一・空軍大将(64、二世)が「リーダーシップについて」をテーマに講演を行なった。
 斉藤氏は、イワタロウさん(青森県)、トシコさん(香川県)の長男(六人兄弟)でサンパウロ州ポンペイア市出身。
 六〇年の空軍入隊以来の飛行時間は六千時間を超え、二〇〇三年に空軍大将に昇進。航空支援部隊司令官を務め、現在はブラジル空軍のトップである参謀本部長。もちろん日系としては最高位。
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 講演で斉藤氏はまず、「リーダーに必要なものは行動と決断。空軍のトップとしては、組織と国防の護持」が最重要だとした。
 そのうえで、「組織の目的や歴史を把握するのは当然だが、一番大事なのは人間」としながらも、「(部下の)潜在能力を引き出すことが肝要。能力の八割ほどで満足し、過剰な期待はすべきではない」と冷静な指導者の顔を覗かせた。
 「一貫性と有言実行が大事。目標、方法の設定、優先事項を明確にすることが確信に繋がる」とし、「常に人に見られていることを意識し、熟考したうえで決断を下すべき。優柔不断は失格」と淡々とした口調で説いた。
 「難問に直面したときこそ、リーダーの資質が求められ、忍耐と自立心、感情のコントロール、謙虚な心が必要」と自分を律することの重要さも挙げた。
 幼い頃から、母親トシコさんに〃実るほど頭を垂れる稲穂かな〃という諺を言い聞かせられたことに触れ、「うぬぼれず、自分を過剰評価しない。グループのなかに連帯や一体感を生み出すことができるかが大事」としながらも、「家族が全ての核」とブラジル的な家族主義の一面も。
 続けて、「長男として家に残って農業を継ぎ、両親を看取るという責任を常に感じていた」少年期を振り返った。担任教師と校長が家を訪問、進学を勧めたことにことから、大学で経済学を学び、十三歳から五年ほど東山銀行で働いたことも明かした。
 空軍に入るきっかけを「知り合った士官学校の人に『制服が格好いいから、欲しい』といったら、入隊を勧められた」と冗談交じりに話した。
 今年五月に訪ねた神戸・旧移民収容所では、「両親が不安を感じながら滞在した場所だと思うと胸に迫るものがあった」と話し、壁に書かれた『ブラジルで必ず勝ってくる』という落書きに〃移民の心意気〃を感じたと同時に移民の子供であることを誇りに思う、と締めくくり、会場からは拍手が送られた。

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