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異例、8カ月の長期取材=高知新聞の富尾記者帰国

ニッケイ新聞 2008年9月18日付け

 移民百周年に関連した取材をするために、高知新聞本社社会部から特派されていた富尾和方記者(34)が十六日に帰国した。今年は数多くの地方紙記者が訪伯取材したが、大半は二週間以内。富尾記者の場合は昨年十一月以来二回に渡り、計約八カ月の滞伯期間で、異例の長期取材だった。
 八月、アマゾンに移住した元海外植民学校の校長・崎山比佐衛の子孫に取材するために訪れたマウエスでは、サソリに刺された。扉を開けようとつかんだら「なんかに刺された」と感じたが放置。だんだん痛みがひどくなり、現地病院で処置した。「一カ月ていどしびれが残った」という。
 取材の成果は、連載「南へ」に結実している。第一部(二十回)では在伯高知県人の現在の姿、第二部(十三回)では〃移民の父〃水野龍の生涯、現在掲載中の第三部(十四~十五回予定)ではアマゾンへの県人移民の姿を描いている。
 今後、第四部ではアルゼンチン、パラグアイに移住した県人、第五部では帰伯デカセギ高知県人子孫や留守家族に加え、日本にいる県人子孫なども追加取材し「もう一つの今」を伝える予定。
 これだけの長大なブラジル中心の連載は、「おそらく高知新聞始まって以来でしょう」という。なぜそこまでとの問いに、「やるなら中途半場に終わらせない県民性でしょうか」と説明した。
 八カ月間を終えて強く感じているのは、「移住者は一緒くたにできない。一人一人がまったく違う。成功者もいれば涙ながらの話も聞いた」ことだという。十三年前には日伯交流協会により、一年間、日伯毎日新聞で研修した。「あの頃に比べどんどん一世が減っている。記事で紹介した人ですでに病気で亡くなった人もいた」と惜しんだ。
 最後に「埋もれている話はまたたくさんある。ぜひとも、また来たい」との胸中を語った。

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