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速成塾=全伯に122人の認定教師=日本語センター=全8回の研修会が終了=今後は啓蒙活動が課題に=「これからがスタート」

ニッケイ新聞 2008年10月07日付け

 ブラジル日本語センター(谷広海理事長)が主催する「第八回速成塾研修会」が九月二十五日に修了式を迎え、新たに十四人の塾教師が誕生した。同センターの教師研修は今回で終了。今研修生を加え合計百二十二人の塾教師が、サンパウロ州を中心に日系コロニアのある十七州に配置される。教師、現在デカセギ訪日中の塾卒業生の「速成塾」の評価は上々だが、これまでに獲得した生徒数は九十人。昨年の二十人に比べ増加しているものの振るわない。「速成塾」の存在を知ってもらうとともに、来日前の日語習得の必要性に対しどう理解を広げるかが、同センターの次の課題と言えそうだ。
 デカセギが訪日後に直面する問題の多くは、日本語と、習慣の違いから生じている。同センターはそれを少しでも減らそうとの目的から、最短三カ月で日本語や習慣理解など必要最低限の準備を行うための「速成塾」を開校。昨年七月から、全日系コロニアに同塾を行える認定教師百二十人を配置することを目標に、八回にわたり研修会が行われてきた。
 第八回目の参加者は、経験の浅い教師から三十六年の教師歴を持つベテランまでさまざま。研修最終日の九月二十五日は、午前中から教師と生徒役に分かれ一対一の模擬授業を行い、その後、活発な意見交換をして六日間の研修を終えた。
 十二年間、日本語能力を生かし日本で働いていた吉岡誠さん(二世、43)は、言葉が壁になり苦労をしているデカセギ者の現状を嘆き、「日本語を知っていれば、それだけで日本でいろんなことができる。速成塾を促進してゆきたい」と今後の抱負を語る。
 小学四年生から一年前までデカセギの両親と日本に住んでいた高梨カリナさん(三世、22)も研修会に参加。ブラジル人の母親が日本語で苦労していたのを振り返りながら、「以前はこういう制度はなかった。とても良いと思う」と話す。また、自分が体験した苦労から、「日本語だけじゃなくて、市役所の手続きや学校でお菓子を食べちゃだめとか、前もって習慣や文化を教えることはとても大事」と、実用的な内容を評価した。
 午後から行われた修了式で谷理事長は、「日伯を背負って地域でリーダーシップを取って欲しい」と参加者を激励。
 デカセギ子弟の多く通う神奈川県の小中学校教員だった塚藤浩美JICAシニアボランティアは、七月に着任し同研修に初めてスタッフとして参加した。「日本で一九九〇年頃から大変な状況にいる子どもたちを見てきた。ブラジルでこういった授業があることは本当に嬉しい」とあいさつし、参加者たちに激励の言葉を送った。
 丹羽義和事務局長は「これからがスタートというつもりでよろしく」とあいさつ。その言葉に、参加者は表情を引き締めていた。
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 同センターでは今後、過去一年で日伯から集まった寄付金約三千万円の残りを利用しながら、認定教師らの支援としてパンフレット、ポスターなど広報資料の配布、また啓蒙活動として各地域の日本人会や県人会と協力をして説明会を開催。さらに状況把握、情報収集のため認定教師らを集めて報告会などを行なっていく予定だ。
 丹羽事務局長は、「口コミや啓蒙活動には時間がかかる。これからは広報に的を絞って、日本語をまず覚えてから日本へ行くという考えを広めていきたい」と抱負を語った。

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