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『日本人の足跡』辿る8作=FDPの百周年ドキュメンタリー=「笠戸丸―」など日本で編集へ=次回作は邦字紙の歴史を

ニッケイ新聞 2008年10月11日付け

 FDP記録映画製作所が移民百周年を記念してつくるドキュメンタリーシリーズのタイトルが『日本人の足跡』に正式に決まった。『コチア産業組合五十周年記念映画』や『サンパウロで乾杯(工業移住者の活躍)』など、コロニアを舞台に多数の映画を発表してきた同製作所。野崎文男プロデューサーとカメラマン兼ディレクターの左藤嘉一さんが来社、経過を報告した。
 同シリーズは全部で八部構成を予定。四年越しで撮影をすすめた第一部の『笠戸丸移民物語』は、笠戸丸移民の苦労や歴史をおもに辿っている。〇六年に亡くなった〃最後の笠戸丸移民〃中川トミさんの晩年に加え、他のメディアがどこも収録していない貴重なトミさんの葬儀の様子、博打打ちイッパチの関係者などをはじめ、サンパウロ州、パラナ州、南マット・グロッソ州に住むノロエステ鉄道敷設に従事した移民の子孫らを収めた。
 二人は昨年十月から一年にわたり、第一部の撮影ほか、当初予定していなかった作品の『ブラジル修養団』や『前田大農場』の収録もおこなった。『前田―』では、大ファゼンデイロになった同農場の創設者、常左衛門さんの人生を辿り、日本人移民の農業への貢献を紹介。先日亡くなった二代目の隆之さんのインタビュー映像も撮った。「収録時に農場を訪れたところ、隆之さんが日本で購入した着物がずっと自宅に眠っていたことがわかった。その着物をFDPのスタッフが着付けを手伝って隆之さんの奥さんに着てもらったところ、夫妻そろって大喜びしていた」。今回、そうした姿も撮ることができたと喜ぶ。
 二人は間もなく帰国し、この三作の編集にとりかかる。来年初旬にブラジルに戻り、『日本人コロニアと活字』の収録を始める。同作では、ブラジル邦字紙の歴史を掘り起こすとともに、日本語や日本文化の普及に果たした邦字紙の役割などにスポットをあてる。新聞業界の家族や日本の外務省や文部科学省関係者への取材も重ねたいという。
 左藤さんは「このシリーズのテーマは私たちが生涯をかけて撮りつづけたいもの。死ぬまでの仕事です」と力強く語り、野崎さんも作品完成に強い意欲を示していた。
 なお、同シリーズの他の作品として『コンデコマ』『宮本邦弘』『宮坂国人』『コチア産業組合』を予定している。

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