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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年10月22日付け

 十一月四日の米国大統領選挙まで二週間を切った。ニュースでオバマ候補が「黒人」と報じられることに違和感を覚えている人も多いだろう。当地的にいえばパルド(混血)だ▼かつて米国には「血の一滴ルール」があり、わずかでも混じっていれば黒人と扱われた。今もその影響が残り、父がケニア人の同候補は米国的には黒人だという▼ブラジルでは真っ黒い肌の人が黒人であって、傍目にはかなり濃くても本人はパルドと認識していることが多い。少々混じっているくらいでは白人と自己申告もできる▼二月二十二日付けオ・ポーボ紙はグローボTV局のドラマを題材に人種差別批判の論説を掲載した。「白人か金髪が、富裕な黒人に仕えている姿を一度もテレビで見たことがない」という。さらに「テレビドラマがブラジル人のアイデンティティ形成に及ぼす影響は強い」と強調し、金持ち白人に仕える黒人家政婦というパターンが「国民意識の白色化を補強する働きをしている」と論じた。事実、黒人系の多い貧困層出身のサッカー選手が成功した後、結婚相手の大半は金髪女性だ▼ブラジル政府は実際、四〇年頃までブランキアメント(白色化)政策をやってきた。ドイツ系、イタリア系などの欧州移民を積極的に導入したのは、それまで人口の大半を占めた黒人を〃薄める〃ためだったという。日本移民は黄色という理由で、当初は受け入れに難色が示された歴史もある▼かと思えば、「混血が普通のブラジルに人種差別はない。あるのは経済格差だけ」という言説も根強く、「黒人」という言葉一つとっても、一筋縄ではいかない現実が横たわっている。(深)

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