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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年10月29日付け

 かつて〃金融の神さま〃と言われた米連邦準備制度理事会のグリーンスパン前議長が自らの誤りを認め、「百年に一度」と表現した今回のグローバル危機▼二十八日、東京株式市場も二十六年ぶりに一時七千円割れし、株安連鎖には底が見えない。九二年のバブル崩壊時より下がった▼いつまでこの変動率の高い展開が続くのか。本来の企業業績よりも株価が下がっているのは、主にヘッジファンドや金融機関が危機により、運用資金の返済のために株式などの換金売りを余儀なくされている状況があるためだと専門筋は説明する▼元凶であるヘッジファンドの決算は十一~十二月に集中しており、それまでに清算する必要があり、本来の株価に戻そうと上がる動きが起きるたびに、売り込まれて乱高下を続ける状態になっているという▼危機当初は露伯などの新興国市場で株を売って資金を引き上げていたが、それでは足りなくなり、今は本丸日本の株式市場を直撃しているのかもしれない▼さらに円の独歩高という今回の異常な展開は、世界の投資機関が原資を、事実上ゼロ金利の円で調達して、高い利回りのドルやユーロで運用していた仕組みが逆転しているからだという。資金を返す段階では、ドルやユーロを売って円を買い戻して返済するので、円買い圧力に拍車がかかり円高が進む。逆に言えば決算が終わり、多くのヘッジが破綻すれば円高は終わる▼これは金融バブルの崩壊だとの指摘がある。原資の何倍もの資金を〃金融技術〃によって世界的に運用してきたのだから、多くの国の株価が半分になっても不思議はない。世界規模の根本的解決策が必要だ。(深)

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