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コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2008年11月1日付け

 ブラジルの写生俳句の草分け、佐藤念腹氏が亡くなってから三十年。先月行われた念腹忌俳句大会で委員長を務めた直弟子の栢野桂山さん(90)は「最近の俳句は二十年前に比べると落ちるね」と笑って言っていたが、俳句に対する「真剣みが違うから」という。
 十一歳で渡伯しコーヒー農園で働き通しの毎日で、ある時日本語を忘れてしまっているのに気付いた。以来、栢野さんは日本語を勉強するため胸ポケットに小ノートと鉛筆をしのばせ、必死で詠んできたという。「命がけだった」とも言うほどだ。
 俳句はブラジルの大地で日本人としての心を育ませる役割を果たしてきたとも言えるのだろう。
 高齢化と共に俳句を詠む人間が少なくなり、念腹氏は寂しい思いをしているかもしれないが、移民史が続く限り日本人の心で捉えるブラジルの句が詠みつづけられていって欲しいと願う。(親)

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