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前会計理事が横領着服!?=長崎県人会・臨時総会=会の残金わずか5千レ=家族の口座へ入金も=うなだれる理事=「先輩方に申し訳ない」

ニッケイ新聞 2008年12月24日付け

 「明らかな横領、背任行為」――。長崎県人会(野口圭三会長)は今月二十日に臨時総会を開き、今井千兼子前会計理事による使途不明金に関し、今年二月の総会時の会計報告を無効とし、徹底調査に乗り出すことを決議した。〇六年、〇七両年度には、あわせて十三万レアルを超える収入があったが、現在同県人会の銀行口座には、五千レアルが残るのみ。被害額は甚大なものになると見られる。母県の年間補助金約七十二万円や会費収入に頼っている県人会の死活問題に発展しており、野口会長は、「解明に最善を尽くします。ご協力願いたい」と十人をわずかに超える会員に深く頭を下げた。
 「会計は彼女に任せっきりになっていたから…県人会発足以来の不祥事。先輩方に申し訳ない思いで一杯」――。総会後にある理事は、ガックリと肩を落とした。
 〇六、〇七両年度の会計報告は、監事役がサインし、今年二月にあった定期総会ですんなり承認。チェック機能の杜撰さも問題だが、何と今井理事は、今年度の正監査に選任されている(今回の臨時総会で解任を決議)。
 多額の使途不明金発覚の発端となったのは、県人会館のIPTU(土地家屋税、年間約六千レアル)の督促状が来たことから始まる。
 「前理事が作成した決算書には、明細が記載されていたから、払ったものと思っていた」―。
 不審に思った野口会長は、中野恵市前会長とともに、銀行に出向き、県人会の口座出入金明細の照会を行った。
 すると―。今井理事の自宅の電話料金数百レアル(県人会の電話代は月額約百レアル)に始まり、電気代や不明な出金が数多くあり、驚くべきことに、家族の複数の個人口座に多額の振込みが行われていたことが判明した。
 「返したらいいという問題ではない。会に損害を与えた行為は犯罪」と総会に出席した某理事は、法的処置の可能性も示唆する。
 〇六、〇七両年度の県人会収入合計は、〇五年度の繰越金三万九千レアルを含め、約十三万四千五百レアル。
 定期総会で承認された会計報告で口座残金は、一万六千レアルと発表されたが、実際は千六百レアルしかないことも分かっている(その後、会所有のサロン賃貸料収入などで現在は約五千レアル)。
 野口会長は、前理事に対して、再三再四、領収書の提出を求めたが、言を左右にし、臨時総会にも出席していない。
 「会う約束をすっぽかされたり、九月に今年二月以降の領収書は貰ったが、以前のものは、『まとめて事務所に置いた』などと言っている」。
 野口会長は県人会の貞方賢彦顧問に相談、今井理事の妹に協力姿勢を取り付けたが、IPTU(〇八年分は未納)が支払われた後、「もう関わりたくない」と接触を拒否しているようだ。
 臨時総会では、今年承認された会計報告を無効とし、さらなる調査を進めることを決議した。
 今井理事の友人だという女性会員は、「彼女はのらりくらりと逃げている。領収書が会事務所にないこと自体がおかしい。会員の全員が騙され、胸が痛い」と悲痛な声を上げた。
 銀行カードの使用は以前、残高照明にのみ使用され、三カ月に一度行われていた会計監査も中野会長時代には行われていなかった。
 「カードがあったことも知らない」という中野前会長は、「会のために一所懸命やった。(今井理事に)『信用してくれ』と言われた」と答え、会長印が必要な会計書類にもサインしていないことから、書類偽造の可能性もあるようだ。
 今井理事の自宅に二十二日午後に電話を掛けると、息子らしき男性が出た。不在らしく、(同理事が)携帯電話を持っているか聞くと、「知らない。掛けても出ない」と辻褄の合わない返答。県人会名簿にある携帯電話は、呼び出し音が空しく響くだけ。
 今年二月、続投を希望する中野前会長と一騎打ち、刷新を図った新執行部。六月には副知事を招き、会創立四十五周年も祝ったばかりだが、とんでもない負の遺産を抱えたまま、新年を迎えることになったようだ――。

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