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日本語版百年史編纂委員会=資料収集キャラバン全伯へ=農業編は全6章、6百頁で

ニッケイ新聞 2008年12月25日付け

 日本語版百年史編纂委員会は十九日午後、百周年協会事務局で記者会見を開き、全伯に埋もれている貴重なコロニア史料を集めてまわる資料収集キャラバンと、第一巻・農業編の概要を説明し、コロニア一般からの理解と協力を求めた。
 最初に森幸一編纂委員長はキャラバンに関して「百年史を編纂するにあたり、まずは全伯の概要を押さえる必要がある」とのべ、各地の日系団体と協力関係を築きながら、史料のデータベース化を進めている移民史料館と一緒になって資料収集を進めていくと語った。
 史料館に所蔵されていない多くのコロニア史料(記念誌、日記、会報などの地方出版物、日系団体の書類など)が各地の日系団体書庫や古参移民の自宅に眠っている状況であり、このキャラバンは、どこに何があるかを把握するためのもの。
 すでに調査員と史料館職員が、マリリア近郊のグラミーニャ植民地、レジストロ、グアタパラ、リンス、アラサツーバ、プロミッソンにミニ・キャラバンを行った。山本晃輔調査員は「未収拾の素晴らしい資料がたくさん地域にあるが、残念なことに散在しており、一部では捨てられていることも分かった。早急に広い範囲で調査を進めていきたい」と説明した。
 年明けから各地の連合会総会を訪問する形でキャラバンを派遣し、史料を探していく。山本調査員は「どんな史料があるか、随時連絡をいただければ」と情報提供を呼びかけた。
 年明け早々、全伯日系団体にアンケート調査票も郵送し、日系社会の全体像を把握する試みも始める。編纂委員長は「古参移住者の方に協力して書いてもらって欲しい」と依頼した。全伯にある日系資料館や博物館とのネットワークをベースにして、地方とのつながりを強化していく方針だ。
 移民史料館の栗原猛運営委員長も「資料集めは史料館が未来永劫続けていかなければならないこと。証言の口述筆記やビデオ収録なども含めて、編纂委員会とがっちりと組んでやっていきたい」と付け加えた。
 農業編『ブラジル近代農業史における日系農業』(仮題)に関して、コーディネーターの田中規子さんは、「全ての史実を網羅するのではなく、ブラジル農業に日系農業があたえた大きなインパクト(例えば協同組合など)をいくつか抽出し、それがどんな意味をもったかについて仮説を展開し、検証していく」との方針を説明した。
 論文のような難しい文章にせず、一般読者に手が届くような記述を心がけるという。全六章に序章と終章がつき、六百頁で構成する。約十人の執筆者には現在、執筆依頼の交渉中だ。
 編纂委員会は、別巻写真集『目で見るブラジル日本移民百年の歴史』(風響社)を今年四月に日本で出版し、ブラジルでも千六百冊を売り切った実績がある。JICAを始め生長の家、戦後移民の個人篤志家十数人からの資金支援で運営されているが、総予算二十八万ドルのうち、現在までに見通しがついたのは約半額。編纂委員長は「百年史は絶対に残すべきもの。みなさまの更なるご理解とご協力をお願いしたい」と呼びかけた。
 なお、吉岡黎明刊行委員長(日ポ両語の百年史を総括する委員会)がポ語版百年史の進捗状況についても説明。コーディネーターは原田清氏で、日系大学教授を中心にプランを作成中で、複数巻を刊行する予定。「来年中に一冊目の刊行をめざし、月一回の会議をしている」と報告した。日本語版と情報を共有しながら、作業を進めていく。

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