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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年12月27日付け

 今年もあと少しで暮れる。米大統領選挙でオバマ氏が黒人で初めて当選し話題になり、アメリカで始まった金融危機はあっという間に世界に広がり、ビッグ3が経営不振で救済を求め大騒ぎになる。結局、米政府が暫定融資に踏み切り、破綻は遠のいたけれども、サミットを開き国際的な不況対策に取り組むなど経済状況は厳しい▼日本のトヨタも初の赤字。大企業も苦しい。苦境乗り切りで人員削減も激しく、ブラジルからの「出稼ぎ」も解雇という悲哀を味わっている。IMFの予測では、09年の日米欧のODP成長率は0かマイナスであり、あの昭和初期の大恐慌にならないようにと祈るばかりである。中国も深刻だし、ブラジルにも暗い影が押し寄せている▼こんな暗黒な動きとは逆に日系社会の動きは活発であった。移民100年を祝う行事が目白押しで1日も休む暇もない忙しさが続く。日本政府が力を入れた国宝を含む展示会は、見事なばかりの美術工芸品であり、知人のB君は3回も足を運んだよと大喜び。書道展や声明(しょうみょう)も素晴らしいの一語に尽きる▼コロニアでは、「海を渡って百周年音頭」には1000人余が移民の心を賑やかに舞ったのがいい。1200人もの凛々しい若者が撥捌きも鮮やかに和太鼓から叩き出す響きは、アニャンガバウーの空に流れ、次なる200年を目指す力強い姿を見せてくれた。今の指導者には日系社会が目指す理念に欠けるが、こんな青年がいる限り余り心配しなくてもいい。あの強靭な腰と腕で難問を解決しながら移民200周年に向け一歩また一歩と踏み出すと信じたい。  (遯)

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