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【特集】商議所・業種別部会長シンポ 2008年

ニッケイ新聞 2008年9月4日付け

順調に伸びる国内市場=全般に「好調」の業界多く=米国発不況の影響小さい=レアル高で苦境の分野も

 ブラジル日本商工会議所恒例の業種別部会長シンポジウムが8月7日に、「08年上半期の回顧と下半期の展望」をテーマにサンパウロ市内ホテルで行われ、約100人が参加し、11部会代表による発表に聞き入った。市場の順調な拡大をうけて国内向けの業界は特に伸びており、中でも四輪や二輪、デジカメや薄型テレビなどの家電、建築などが好調。ペトロブラスやエタノール関係の大型プロジェクトも続々と続き機械金属部会には絶好調の分野が多くあるほか、ボルサ・ファリミアの関係で低所所得層の購買意欲も高く、食品や家電など全般的に好況な業界が多い。ただし、レアル高が響いて原材料のコスト高などの厳しい状況になってきた業界や、好況に伴って深刻な人材不足に悩む業界もでてきた。


内需拡大は依然継続=GDPは徐々に減速

 【コンサルタント部会】ブラジルの実質GDP成長率は昨年5・4%だったが、今年上半期は4・8%、下半期はさらに減速して4・4%。09年は3・8%と予測されている。
 内需拡大は継続する見込み。09年に関して中銀は4・0%とし、インフレ懸念、米経済の減速、レアル高などを悲観したモルガンは3%と予測している。モルガンは08年がブラジル経済のピークで、09年はインフレ対抗処置として金融引き締めの影響がでると考えている。
 貿易面ではレアル高により、昨年同様、輸入の伸びが輸出を上回る見込み。中国や他地域との取引拡大で、対米依存度(02年25・2%→07年15・6%)はさらに下降する。
 為替は年末まで1・60レアル前後、09年予測では1・75レアルとした。
 対内直接投資は07年345億8500万ドル(前年比84・1%増)で、08年はそれを上回るペース。ほぼ全業種で伸張し、中でも欧米勢の攻勢が顕著。米サブプライム損失をブラジルからの利益送金でカバーする動きが大きい。GM新工場にみられるように、欧米自動車メーカーにとってはブラジルは本国、中国に次ぐ市場となってきた。ウオールマートの買収攻勢、シティグループが利益の利益の3分の1をブラジルからあげている。
 その送金などが影響し、経常収支は上半期で174億ドルの赤字を記録し、09年は315億ドルとし、さらに広がると予測した。


為替はR$1・59~65=保険市場は拡大傾向

 【金融部会】上半期の経済指標はGDP成長率は6月が5・8%、12月は4・8%と若干の減速予測。政策誘導金利(期末SELIC)は6月12・25%から12月の14・25%へ、為替レートは6月1・59レアルから12月1・65レアルと予測。
 下期展望としては収入保険料・損害率などは「市場は拡大傾向」「自動車保険の競争激化に伴う損害率悪化懸念」が挙げられた。


対米依存は更に低下=親密化する伯亜貿易

 【貿易部会】上期実績では輸出が前年同期比で23・8%増(906億4500万ドル)、輸入が同50・8%増(792億9600万ドル)。国際価格の高騰で輸出額は4割以上伸びたが、数量ベースでは9・7%どまり。レアル高と内需拡大で輸入が急増した。上半期としては、過去最高の輸出額を記録したが、貿易黒字は同45%減(113億4900万ドル)と03年水準まで落ち込んだ。
 ブラジルからの対米輸出は上半期で1286万ドル。総輸出額の14・2%を占めて1位だが減少傾向にある。逆に大きく伸びているのは2位のアルゼンチンで36%増(858万ドル)、3位の中国は50・7%増(7407万ドル)、4位オランダは39・2%増(507万ドル)、8位のロシアも36・9%増(230万ドル)あたりが顕著な増加を見せる。対米依存から脱却し、南米及びBRICSなどに拡散している。ちなみに日本は6位で22・5%増(2537万ドル)。
 輸入国別では、米国が32・3%増で14・3%を占め1位。2位は中国が71・7%増(11・3%)。3位のアルゼンチンは32・9%増(7・9%)で、輸出入ともに急増し、蜜月状態となっている。5位の日本は50%増だがシェアは4%のみ。韓国が乗用車を大量に輸入して72・2%増となり、3・3%を占める。
 08年通期では、通商研究センター予測として輸出額1930億ドル(前年比20・2%増)、輸入額1720億ドル(同42・6%増)、貿易収支額210億ドル(同47・5%減)と発表した。


売上・利益とも好調=年々倍増する農薬分野

 【化学部会】筆記具分野では、レアル高による輸入コスト減で売上・利益とも増加。TVCMやベージャ誌への広告が有効。下期も好調予想。
 化粧品分野も売上・利益とも増加。サンパウロ市とリオの高級店に投資を集中したのが好評で、二桁成長を見込む。
 農薬分野は、高い国際穀物相場、作付面積増加などの影響で毎年倍増の好調さみせる。むしろ、市場の拡大に供給が追いつかない状態。
 12分野(16社)中、上期で売上増が10分野、利益増が8分野をしめ、全体的に好調。下期は8分野で売上増、7分野で利益増を見込んでいる。


拡大する4輪市場=リース購入が増加

 【自動車部会】4輪車販売台数の上期累計実績は、前年同月比で131%と順調に市場拡大。下半期も市場は拡大しつづけるが、インフレ、金利上昇、ローン引き締めによる消費力低下が懸念され、現在の30%拡大ペースは困難か、という予測もでている。
 ブラジル自動車工業会は昨年10月の時点で、08年の販売台数を前年比118%増と予測していたが、大幅な市場拡大に伴い、それを124%(306万台)に上方修正した。08年の輸出入を含めた生産台数では、やはり上方修正して343万台(輸出78万台、輸入41・5万台)。
 販売傾向としては、1Lカーの販売は拡大しているが、消費者の所得増加が影響して大型車が売れ、市場に占める比率は低下傾向。昨年54%、08年は51・5%と予測。
 購入方法はリース活用が拡大し、08年は35%(昨年30%)、逆にクレジット比率が31%と低下傾向(昨年38%)にある。
 自動車メーカーの08年投資額は過去最多の49億ドルの見通し。多くは生産能力拡大を目的としている。
 二輪部門は、上期の市場は104万台(前年比132%)、生産111万台(同126%)と順調に拡大。レアル高で輸出は微減するとの予測。「現在の為替レートでは輸出競争力ない」との話も。購入方法は、伝統的に多かったコンソルシオが減り(04年52%→08年23%)、代わりにクレジット(26%→62%)が激増している。この流れを受け「今後の金利、ローン審査の動向が二輪販売に大きな影響与える」という。


プラント分野は絶好調=全体的に好調を堅持

 【機械金属部会】部会全体で上期は好調。下期も好調堅持の予想。マイナス要因は原油・材料コストの高騰とレアル高。
 鉄鋼分野では08年上期好調で、下期の展望では「新記録確実」という。電力・大型プロジェクト分野では、上期は大型水力プロジェクトが目白押し、ペトロブラス社の旺盛な投資などをうけて好調、下期も大型案件が継続し好調維持。
 プラント分野の上期は紙パルプ業界・石油化学業界・エタノール業界などが投資旺盛で「絶好調」、下期もエタノール業界のプラント建設ラッシュなどで「絶好調」維持の予測。
 建設機械分野も上期、下期ともに「絶好調」。立役者はPAC。上期の国内販売は同期比35%増。下期も同期比20%増見込む。ただし輸出は落ち込み予想。
 産業用圧縮機と鋳造機械は上期、下期とも「好調」。各種工具、軸受、潤滑油分野では「やや好調」から「好調」。


航空業界の需要伸張=日本から百周年客続々

 【運輸サービス】航空業界は国内外ともに10%以上の旅客需要の伸び。下期はさらに燃料費の高騰が予想される。
 海運業界の上期は、強いレアル通貨から貿易の不均衡が加速。特にアジアから輸入スペースが不足している。燃料油価格が高騰。下期も貿易不均衡状態続き、燃料費はさらに高騰する見込み。
 旅行・ホテル業界の上期は、ドル安レアル高で国外旅行の伸びは順調。来伯外国人客3・4%増でホテル業界も好調。移民百周年で日本からの訪問客も伸張。下期では空港問題が大きな課題。
 通信業界の上期は、携帯電話加入者数(08年六月)は1億3300万台(世界5位)、81・03%がプリペイド方式。VIVO=30・36%、TIM=25・40%、CLARO=24・87%、OI=15・25%など。ブラジル人口の22・5%がインターネットにアクセス。6月のユーザー数は2290万人。


旺盛な個人消費で好況=ボルサ・ファミリア景気

 【食品部会】好景気、旺盛な個人消費で国内販売は順調に推移しているが、個人クレジットの増加や食品のインフレ進展からくる先行きの透明感から「今後の見通し難しい」。急激なレアル高により輸出企業は赤字を余儀なくされている。世界的な原料価格の高騰により、最終商品への価格値上げに波及している。
 国内家庭用食品では、ボルサ・ファミリアもあって下期も個人消費は旺盛の見込み。家庭用市場のノウハウ活かし、成長続く外食市場への展開が今後の成長の鍵。
 輸出健康食品(アガリクス、プロポリス)はレアル高の直撃を受け、日本向けアガリクスの輸出が激減し、生産農家が大変厳しい状況。輸出を国内向けに切り替え、事業を展開している。
 乾燥麺事業では、前年比で二桁の販売の伸び。現政権による財政投入が集中する北東部で特に伸びが顕著。下期も堅調に推移する見通しだが、原材料高からくるコスト上昇は避けられない予想。


薄型テレビの販売激増=好況で人材不足顕著に

 【電気電子部会】全体的に見て上期では、米国経済減速の影響はあまりなく、全般的に成長継続。レアル高で輸入販売が伸張する一方で、国内産業の空洞化懸念生まれる。下期も好調継続を予想。レアル高による貿易収支悪化がおよぼす影響は要注意。経済が過熱し、技術のある人材の不足が顕著になってきている。
 携帯電話やPCの爆発的な伸びが一段落。レアルベースで順調な成長、ほぼ全分野で二桁成長が継続する見込み。
 マナウスフリーゾーンの上期生産動向ではプラズマLCD(薄型テレビ)が273%増、デジタルカメラも380%増、携帯電話は154%増。薄型大型テレビでは、02年に7万レアルした50形プラズマテレビが、今年は4499レアルに価格低下するなど、市場拡大と共に競争が激化している。


住宅不足は800万件=労働者不足で賃金上昇

 【建設不動産部会】全般的に見積もりの引き合い非常に多い。建築資材の値上がり激しく、利益を圧迫。労働者建設機械の不足が深刻。
 サンパウロ市の不動産販売件数は07年に51・8%増。労働者が不足し、賃金が平均33%増。
 全伯の住宅不足件数は約800万件。うちサンパウロ州が152万件、北東伯各州がのきなみ40万~60万件と大変な不足。
 うち79%は低所得者用住宅。住宅ローンの簡易化・長期化、金利引下げや固定金利で、低所得者層のマイホーム購入が可能に。


レアル高で厳しい状況=綿花農家の転作も

 【繊維部会】ドル安レアル高により、大量で廉価な輸入製品や輸入綿糸が市場に出回り、大きく需給バランス崩れ、厳しい状況に。倍近く値上がりした肥料代により、綿花栽培収益が大きく下落したため、より収益のとれる大豆などの農産物へ転作を決める農家が多く、来年のブラジル綿作は130万トン台(07/08年は155万トン)へ大減産になる見込み。「ブラジルは豊富な綿花、優秀な労働力、大きな市場があり、まだまだ戦っていけると確信している」とのコメントで締めた。

《講評》
 ブラジル大使館の宮下匡之参事官は、本年前半の大使館の取り組みとして、シンポリックな日伯関係づくりに向け、高速鉄道を実現に努力を傾注するとの意気込みを語った。さらに、両国関係の懸案事項になっているエタノールや半導体工場設置に関しても、年頭からブラジル政府が不満を示す発言を繰り返すなどの政府間のフラストレーションがたまっていたが、6月のジウマ・ロウゼフ官房長官訪日を機に説明を重ね、「トゲが抜けてきた」という。
 サンパウロ総領事館の丸橋次郎首席領事は、「ブラジル勤務15年になるが、未来の大国の〃未来〃がようやく近づいてきた」とのべ、全世界がブラジル市場を狙っている状況になりつつある今、「オールジャパンでの取り組みが必要」と強調した。「天気の時にこそ雨漏りを直せ」との諺をあげ、経済が好調な今こそ制度改革などの調整をする時期だと語った。

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