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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年1月16日付け

 今年も多くの県人会や地方文協では役員改選が行われる。世代交代の過渡期にある現在、苦々しく思いだされる経験も多々ある。例えば〇三年から始まった、福岡県人会の新会長に就任したUSP医学部の教授が旧役員らとあつれきを起こして訴訟にまで発展した事件だ。わざわざ母県から県議が仲裁に駆けつける騒ぎにまで発展したことは記憶に新しい▼ブラジル社会で活躍したエリート二世が新役員の中心を占める体制になったところでは、どこかセンスの違いを強く感じ、期待はずれだったとの想いを強くする一世元役員は多いようだ。最近特に「コロニア育ちでないインテリ二世は、日系団体のリーダーには向いていない」という意見を耳にする。文協の会長選挙、百周年協会と一世とのあつれきなどを振り返るに、その思いを深くする▼先日の藤間流日本舞踊学校の「舞い初め」の折、芳之丞校長から興味深い話を聞いた。「名取りになるには少なくとも十年間の精進が必要」だという。どんなに上手くてもそれ以前には襲名させない。踊りの技術以前に、心構えが浸透するのに時間がかかる▼ある意味、名の通った日系団体の役員になることは、移民や日系人としての模範を周りに示し、後進を指導する立場になるわけだから、日系としての「名取り」に例えられる。なら青年部や婦人部で十年以上やった経験のある叩き上げの二世こそが、次世代には相応しいようだ▼コロニアの後継者に都会の有名大学を卒業した経歴は必要ない。むしろ移住地に残って親の面倒をみ、日系団体の下働きで長い時間を過ごし、気持ちの通じた若者こそが相応しいのではないか。(深)

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