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静岡県人会=対立候補で後味悪い総会に=発言禁止の強権発動まで=荒れた様子に呆れる会員=「どっちにもつかんよ」

ニッケイ新聞 2009年3月4日付け

 ブラジル静岡県人会(杉本教雄会長)は二月二十八日午前、サンパウロ市の同会館で定期総会を行った。同会としては前代未聞、対抗会長候補が立候補主旨を書いた書面を総会で配るなど異例の展開になった。ただし、事前に理事会がシャッパを完全に組まないと立候補を受付けない選挙規約を作ったため、不発に終わった。しかも議長を務めた杉本会長は強権を発動して「あなたには発言権もない」と決めつけ、物別れのまま後味の悪い総会となった。

 総会前に、会長候補に名乗りをあげたのは川崎年男さん(68、菊川市)。紙三枚に自己紹介、選挙公約、理事として行った仕事や現体制の問題点などを書き連ね、日ポ両語を作って総会参加者に配った。松浦アントニオさん、石井久順さんら現職理事も対抗グループに回り、真っ二つに分かれた点でも異色の展開となった。
 配布文書に書かれた問題点の一つが、次のような県人会カラオケ部への批判だった。「今まで会計報告もされず、収入も県人会に入金されていませんでした。年一回五~六千レアルを〃寄付金〃として払っているが、これは通常の家賃の半額」という。
 県人会の名前でやる以上、会計も会の管理下になければいけない、そうでなければ個人名でやるべきと主張する。
 さらに「役員会で決まった毎月の会計報告はされず、入金もありません。実行してください」と追求する。その他、IPTU(土地家屋税)を七年間滞納になっている件などを問題視した。
 総会は午前十時半から始まった。
 議長を務めた杉本会長は、〇八年事業報告を一行も朗読せず、矢継ぎ早に会計報告に進み、拍手で承認させた。総収入は十九万八千百二十一レアル、総支出は十五万三千七百八十六レアル、繰越金は四万四千三百三十五レアル。
 〇九年度予算は十七万レアルで、うち五十周年記念誌に三万五千レアルが計上された。カラオケ部の寄付が七千レアルなのに対し、川崎氏は「昨年は、大会利益や今までの余剰金など計三万三千レアルがカラオケ部から入金された。今年ももっと計上していいのでは」と質問した。
 これに対し、山本茂理事は「昨年のカラオケ大会は二日間、今年は不景気で一日の予定で少な目に見積もっている。すでに二十年たった静岡のカラオケ部は有名、やましいことは何もない。ただ、今年から会計はガラス張りにして欲しい」と意見を述べ、予算案はそのまま承認された。
 問題の役員選出では、杉本会長が自らのシャッパを紹介。川崎候補にいっさいの発言を認めず、「議題として認めない。発言を許さない」と突っぱね、マイクを渡さなかった。その間、川崎氏は大声で「杉本会長は評議員長も兼任し、違法な状態になっている」などと語りつづけ、総会は混乱した状態になった。
 参加者から「対抗シャッパはあるの」との質問が飛ぶと、杉本会長は「総会前に確認したが他にシャッパはない」とし、「賛成者は着席承認」と呼びかけ、あっという間に自らのシャッパを信任させた。
 というのも会長候補が出そうだとの噂を聞いた理事会では、二月二十一日に急きょ選挙規約をつくり、完全なシャッパでないと受理しないという内規を決めた。そのためシャッパ全員を集めなかった川崎さん出馬は結果的に不発に終わった。
 最後に八十八歳高齢者表彰が行われ、細川明さん、久野花江さん両名が表彰され、足早に総会は閉幕した。
 約五十人参加した会員の一人、斎藤三代さん(78、由比)は「カラオケの件は、そんな問題にすることではない。お手伝いいただいてるんだから、それなりの金額を納めてもらえば、それで結構」との意見。溝江孝子さん(74、掛川)は「今までにこんなことなかった。実に不愉快」とのべた。
 一方、福家和紀さん(81)は呆れたように「どっちにもつかん。なんとも言わんですよ」と手短に感想をのべたのみだった。

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