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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年3月6日付け

 帰国子弟と話していて気になるのは、一見バイリンガル(二言語話者)風で、ポ語はペラペラ、日本語もキレイに話す、と最初は感心するが、実はどちらも日常会話レベルしかできず、どちらの言語でも論理的な思考能力が足りないと気付く場合が多いことだ▼言語レベルが中学校以前で止まってしまっていて、日常会話ならどちらも問題ないが、込み入った話ができない。いわゆる高校・大学レベルの内容になると、日伯どちらの社会についても教養や知識がなく、思考能力が中途半端になっている▼論理的な思考能力は、十代前半までに繰り返し訓練しないと身につかないといわれる。つまり、年をとって脳神経が固まってしまってからでは遅い。言葉は達者だが、思考能力が発達していない帰伯子弟が多い気がする▼このような人は帰伯した方が、目立たなくてすむという考え方もある。こちらでは思考能力どころか、読み書きができない人も珍しくなく、社会がはるかに深刻な問題を抱えているからだ▼日本に住んでいる子弟が、しっかりした論理的思考能力を身に付けるなら、施設や教育者のレベルの問題から、ブラジル人学校では難しいといわれる。子弟が日本にいるのなら、事実上、日本の公立学校しか選択肢はない。例え何語であっても、教育されないよりは、された方がいい▼しかし、日本には「外国人子弟の教育は義務ではない」との発想がある。これが一見バイリンガルに見える思考能力欠如者を生んできた原因ではないか。国籍で差別して子供の教育機会を奪うことは望ましいことではないし、世界は高度なバイリンガルをもっと必要としている。(深)

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