ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年3月20日付け

 「現存する最古の日系校は赤間学院(一九三二年)」だと先週の本欄で書いたが一部間違いがあった。お詫びしたい▼一九三二年に創立されたのは郷原満寿恵さんの日伯実科女学校で、サンパウロ市に現存する日系校ではこちらが最古だ。現在も孫の中原啓子さんによってOEN保育学園として受け継がれている。郷原さんの長女、作本登美子さんが持参した同女学校三十五周年記念誌『姉妹』には、三二年の第一回卒業生が写真入りで紹介されている▼ただし、同女学校は創立六十周年を待たずに閉校、その前から経営していた「むつみ幼稚園」は残った。そこから一九九九年に分かれたのがOENだ。現在はコレジオとしての認可も受け、初等教育も始めており、将来が楽しみだ▼赤間学院の方は『創立五十年史』をひっくり返したところ、実は三三年創立と判明した。両校が相前後して創立されたのは、笠戸丸から二十五年、後続のこども移民や二世が続々と思春期を迎え、教育の必要性が高まっていたからだ。同学院の赤間アントニオ前理事長に尋ねると貴重な資料を送ってくれた▼赤間みちへ校長は建学二年目に「今や二十万に垂々としているこの邦人社会で、適当な配偶者を求め得ず、(中略)日本より呼び寄せやうとしても経済が許さない青年の、如何に多きかを御覧なさい。此の現状を見た時なぜ女子教育機関を設けざるか!と叫ばざるを得ないのでございます」と書いている。建学の志は高貴だ▼振り返るに、デカセギ子弟への教育対応が遅れたことが悔やまれる。在日ブラジル人学校にも、このように子弟教育に一生を捧げる人材がいると強く期待したい。(深)

image_print