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《ブラジル》あの三宅ローザの生涯が凝縮された一冊

三宅ローザのポ語伝記『Rosa da Liberdade - A História de Rosa Miyake e do programa de TV Imagens do Japão』

三宅ローザのポ語伝記『Rosa da Liberdade – A História de Rosa Miyake e do programa de TV Imagens do Japão』

 「Isto é uma vergonha」(それは恥だ)という決まり文句でニュースを締めくくることで有名な、強面の司会者ボリス・カゾイ(77)をご存じだろうか。
 PT政権時代の2005年12月、メンサロン汚職、PT市長のトニーニョ・ド・PTやセルソ・ダニエルの暗殺事件などの件で歯切れよく政府批判し、ルーラ大統領(当時)の差し金でジョゼ・ジルセウがレージ・レコルジ局幹部に「カゾイを黙らせろ」と圧力をかけ、それを彼が拒否した結果、辞職させられたという事件が起きた。現在、彼はRedeTV! Newsだ。
 ソ連でヨシフ・スターリンの独裁政治が厳しさを増した1929年、ユダヤ系ロシア人だったボリスの両親は多くの仲間と共に迫害を恐れてブラジルへ移住した。当地で5人兄弟の一番下として生れたボリスは、1歳の時に急性灰白髄炎(ポリオ)に罹った。
 そのせいで9歳まで歩行できず自宅にこもる生活の中で、ラジオだけを喜びとする少年期を送った。
 そんな15歳(1956年)の彼が、夢にまで見たアナウンサーの仕事を得たのが日系ラジオ局だった。1952年に創立した日系ラジオ局サントアマーロ。同社は奥原康永(兄)、奥原マリオ清政(弟)の共同経営だった。
 カゾイは普段、コロニアの野球大会の中継が多かったが、58年の日本移民50周年の大イベントもラジオ中継した。
 そんなカゾイの話が書かれているのは、TVクルトゥーラ局の看板ニュース番組「ジョルナル・ダ・クルトゥーラ」編集局長の平リカルドさんが書いた三宅ローザのポ語伝記『Rosa da Liberdade – A História de Rosa Miyake e do programa de TV Imagens do Japão』(Editora Contexto)だ。
 ローザ本人の生涯を中心に、カゾイのような個性的脇役たちの意外な逸話が随所に織り込まれている興味深い本だ。
 カゾイは8年間の同ラジオ局勤務時代、三宅ローザが司会する番組でアナウンサーをしたこともあるという。《彼女は日系コロニアのせん望の的、スターだった。彼女は自分のテレビ番組「イマージェンス・ド・ジャポン」によって、その美しさ、親しみやすさ、知性によって、コロニアの壁を越えて全伯的な名声を得た》(同書、28頁)とカゾイはふりかえる。
 TVレコルデが1965年8月に始めた若者向け音楽番組「ジョーヴェン・グアルダ」(以下JG)は、軍政下における大衆音楽運動として10代若者に爆発的な人気を呼び、番組名が一群の人気歌手グループを指すようになった。
 その番組に日系で唯一、常連出演していたのがローザだ。今も「レイ(王)・ロベルト」と大衆音楽界の巨匠扱いを受けるロベルト・カルロスが、この番組で司会兼歌手を務めステータスを築いた。そのロベルトから当時、可愛がられていたのがローザだ。
 前書きには、彼女がロベルトに「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」を教えた時の逸話が詳しく描写されている。ロベルトは真っ赤なスポーツカー、フォルクスワーゲンのカルマンギアに載って、さっそうと現れた。
 《臨時日本語教師を命じられたローザは、緊張して心臓が高鳴り、息づかいまで荒くなった。歌手(ロベルト)に挨拶をすると、彼は紳士の振る舞いで、彼女の手にやさしくキスをした。差し向かいに座ったローザがスキヤキを歌って聞かせると、ロベルトは注意深く聞き、大文字で発音を書き取り、ギターの胴の上部にその紙を張り付けた。2度ほど自分でも歌うと、もう舞台に立つ準備は万全になっていた》(11頁)とある。
 ローザが歌って全伯的に大ヒットしたヴァリグ航空CMソング「浦島太郎の歌」(1968年)も有名だ。なぜブラジルの航空会社のCMに、浦島太郎のアイデアが盛り込まれたのか。そこには音楽評論家の坂尾英矩さんが深くかかわっていたことが同書(31~33頁)には明らかにされている。
 この本を読んでわかったことの一つは、30年近く名声を誇ったTV番組『イマージェンス・ド・ジャポン(IMJ)』が終わった理由の一つは、NHK国際放送が始まったことだった。

刊行記念会のお知らせ

刊行記念会のお知らせ

 それまではNHK制作の紅白歌合戦や数々のドラマの放映権をIMJが買い、再放送することで同番組の目玉にしてきた。それ放送技術の発達により、NHKが直接にブラジルで放送することになり、IMJのメリットが失われた。時代は流れてローザは引退した。
 それにしても、平さんはテレビ局編集局長という超多忙な毎日のどこに、このような取材を重ねる余裕を見つけられるのか。その超人的な仕事ぶりに感嘆するばかりだ。

 日系コロニアとまったく関わりのない平さんのジャーナリスト人生の中で、最初に日系の話を本にしたのは数奇な伯父の生涯を描いた『Assinatura do Preso』(Editora Daikoku、2012年)だ。それを栗原章子さんと中田みちよさんが『囚人の署名』として翻訳し、2年前の6月から本紙6面で連載した。憶えている読者も多いだろう。
 三宅ローザの人生にはブラジルと日本の色々な出来事が密に織り込まれている。23日午後6時半から聖市のリブラリア・ダ・ビラ(LIVRARIA DA VILA Rua Fredique Coutinho, 915 Piso Superior)でその刊行記念会が行われる。
 ここ10年ほど、すっかりコロニアから遠ざかってしまったローザだが、この本を機会に、ぜひ復活して欲しいものだ。関心のある方はぜひ、刊行記念会に足を運んでほしい。(深)

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