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救済会総会=協力会員増で安定運営目指す=「宮腰講堂を利用して」=問われる理事会の手腕

ニッケイ新聞 2009年3月28日付け

 日系老人ホーム「憩の園」を運営する救済会(吉岡黎明会長)の第五十七回定期総会が二十一日午前、文協ビル内で約五十人が出席し、粛々と行われた。激減する協力会員を増やすことや、昨年の創立五十周年で建設した宮腰千葉太講堂を積極的に貸し出して、経営の安定化を図る方針が再確認され、役員らは気持ちを新たにし、伝統の団体を発展させることを誓った。
 平田光男専任理事の司会で、一分間の黙祷を捧げ、上原悦子副会長が活動報告をした。「五十八年の創立以来、今まで千人以上の老人を受け入れてきたのは、たくさんのボランティアのおかげ」と感謝した。
 会計報告では収入は二百八十七万レアル、支出は二百七十四万レアル、余剰金は十三万レアルだった。監査役が意見をのべ、承認された。
 〇九年の活動計画で相田祐弘副会長は「経済状況は悪くなっている」と訴えた。一九九〇年に八千人もいた協力会員が昨年度は九百四十四人に激減したことを報告し、「もう一度、協力会員を増やし、会費収入を増加させる運動を始める」ことに加え、宮腰講堂の貸し出しによる賃貸収入を増やすことで経営安定化を図る方針を説明した。
 さらに憩の園近隣の地域社会向けに高齢者介護講習会を続け、より密接な関係をつくり、社会全体の高齢化に対処していく方針だ。
 そして「今年は五十年の歴史を踏まえて、次の五十年への第一歩を踏み出す年」と位置づけた。
 〇九年度予算案は収支ともに二百八十九万レアルで、うち会費収入は増加分を見込んだ七十二万レアルが計上され、そのまま承認された。
 質疑応答で大浦文雄顧問は、「組織は小さいが、六十人もの寝たきり老人を預かっており、その役割は非常に重い」との認識を示した。さらに昨年度、現有資産から投資して講堂を建設したことに対し、「手持ち資産が減っているのは問題。従来なら、新施設を作るのに絶対に手持ち資金に手をつけなかった。理事が懸命に寄付を集めた」と危惧を示した。
 加えて、現在はサンタクルース病院から医療の無償協力を受けているが、日系福祉団体同士の横のつながりを広げ、近隣の援協施設とも協力しあうべき、と提案した。
 来賓あいさつで援協の森口イナシオ会長は「サンタクルース病院同様、援協も積極的に協力していく」との方針をのべ、JICAサンパウロの千坂平通支所長も「憩の園に入居できない人への支援も大切」、県連の園田昭憲副会長も「県連も微力ながら協力していきたい」とのべた。
 閉会後、昼食となり、左近寿一前会長が乾杯の音頭をとり、出席者はエスペランサ婦人会の手料理に舌鼓を打った。
 黒木政助常任理事はニッケイ新聞の取材に対し、「新理事会の方針で去年からリッファをやめたが、それまではこれで会員減を補っていた。その分、今年は会員を増やすしかない」という。
 吉岡会長は、本来は昨年建設した新講堂の総工費九十万レアルは全額寄付を充てる予定だったが六十万しか集まらず、足りない分を現有資産から払ったことを認め、「返す」と言明した。協力会員増加に関しては、「今後、会社や団体に会員加入のお願いにまわる予定」とのべたが、「増やす目標人数は設定していない」という。
 吉岡会長としては現方針を地道に遂行していくより、憩の園の向かいにある所有地三万五千平米を活用して、高齢者対応の集合住宅を建設して収入増を図るなどの新規プランに関心を示した。
 寄付金頼みの不安定な運営をいかに変革するか。半世紀の伝統を持つ理事会の、実直な手腕が問われている。

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