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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年4月10日付け

 現在、日系社会面に随時掲載している「帰国制限問題」に関して色々な意見が寄せられた。しっかりとした論陣を張る、見識の高い読者が多いと感心するばかりだ▼特に「大使館の意見に賛成だ」と一時間も電話で激論を交わした長田稔さん(78、東京)の意見は在伯五十七年の矜持にあふれ、大変参考になった。また、名前部分がかすれて読めなかった別の読者FAXにあった、記者の意見は「感情的すぎる」との批判も真摯に受け止めたい▼このように真摯に議論を交わす読者の熱心さに比べ、〃引き金〃を引いたはずの大使館、領事館の腰の引けた対応が気になる。あれが「抗議文ではない」というなら、なんなのか。本当に正しいと思うのなら、読者のような熱意をもって議論しても良いはず▼たとえ合意はなくとも、充実した討論自体が有意義だ。このような議論の積み重ねがあってこそ、共通認識は深まる。賛成であれ反対であれ、反応が大きかったこと自体に、問題提起した手応えを感じる。記者に間違えがあれば襟を正して訂正し、修正点があれば直し、議論全体を磨き上げ、読み応えのあるものにしていく過程が重要だ。それに参加できることは記者冥利に尽きる▼弊紙では、なにか問題が起きた場合、常に両側の意見を載せることを心がけてきた。ありがちな、告発する側に偏った紙面作りをせずに極力やってきた▼読者との対話を大事にし、みんなの声を紙面に反映させることが、邦字紙の使命だと肝に銘じたい。もちろん、紙面の都合があり、すべてを掲載することはできない。交通整理は必要だが、読者と共に作る紙面を目指したい。(深)

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