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介護職で新しい道を=浜松で外国人向け講座

ニッケイ新聞 2009年4月16日付け

 【静岡新聞】日系ブラジル人の多い浜松市で、定住外国人に人材が不足する介護職への道を開こうとする動きが広がり始めた。浜松国際交流協会(HICE)が失職者向けに開講した「介護のための日本語教室」では、修了生三十人のうちブラジル人七人の採用が決定。HICEでは「必要とされている分野で、安定した雇用を」と受講生のフォローアップに力を入れている。
 二月中旬に始まった教室には、定員の約五倍の百四十三人が応募。面接や筆記試験をパスしたフィリピン人とブラジル人三十人が、約一カ月かけて食事や入浴、排せつの介助、衣類の着脱などで使われる日本語会話を学習した。県が主催する介護の現場体験にも申し込み、市内外の七施設でお年寄りと触れ合った。
 掛川市の介護施設に就職が決まった袋井市の青木・アメリア・サユリさん(45)をはじめ、受講生の多くが工場労働に従事。来日十五年の青木さんは検査やはんだ付けなどの仕事をしていたが、景気悪化の影響で昨年末で解雇され、家族五人の暮らしを支えるために「なんとしても仕事を見つけないと」と講座に応募した。介護職は未経験で特殊な用語を覚えるのに四苦八苦したが、「介護の心構えを丁寧に教えてもらえた」と講師を務めた介護士らに感謝しきりだ。
 浜松市中区和合の特別養護老人ホーム「愛光園」で現場体験に臨んだ受講生のオザキ・カズミさん(41)=同市中区=も、市内の部品工場から休職を命じられ、介護の世界に飛び込んだ。「すごく緊張する」と話しながらもお年寄りとの会話を順調にこなし、施設スタッフも「コミュニケーションに問題ない」と評価。市内のデイサービス事業所への就職が決まった。
 日系ブラジル人の介護分野での就労に関しては例が少なく、受講生からは「(介護に)興味があったが、挑戦するきっかけがなかった」「ヘルパー二級の資格を取得したい」などさまざまな声が上がった。HICEの担当者は「定住外国人も高齢化の時代を迎える中、二カ国語を話せる介護の担い手は今後ますます重要になる」と、受け入れ体制の整備や学習支援の必要性を指摘している。

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