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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年5月5日付け

 メキシコに豚インフルが起こり、感染者は2000人を突破し、犠牲者も急増している。それにしてもわからないことが多い。これまでは豚インフルは人には感染しにくいとされていたのにー人から人へ伝染するし、罹患者が高齢者や幼児ではなく働き盛りの若い世代に集中しているのも謎である。WHOは「大流行と警告し、米、カナダ、香港と次から次に患者が出ており、その速さには驚くしかない▼まさかペストのようにはなるまいが、とにかくマスクに始まり手洗い、うがいという予防作戦に徹するしかない。「厄介者、害毒」の意味もあるペストは、ローマ時代に大きな被害があり、1347年からの欧州では大惨禍を引き起こしている。このときはヨーロッパ総人口の3分の1、約4400万人が死亡したとされる。このペスト菌を発見したのは北里柴三郎で1894年の香港ペストのときであった▼これも被害が大きく、インドでは1200万人が死に追いやられている。まさに世界的大流行(パンデミック)であり、豚インフルも今の状況が続けば想像を超える事態になりかねない。タミフルが有効とされるが、WHOは「新型」と公表し、米疾病対策センターも「新ワクチンは早くても9月」と述べており、特効薬はないのが実態ではないか▼日本も水際作戦を展開し、空と港の検疫を強化しているけれども、米ロスから帰国の女性が陽性反応を示し最終的には否認されたが、ブラシルも感染の疑い16人、観察中44人と危険水域にある。従って、今の防禦作戦だけで万全とは申し難く1人1人が防疫に取り組むしかない。  (遯)

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