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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年5月16日付け

 あの「若宮丸」を始め大黒屋光太夫など日本とロシアの結びつきは深く古い。珍味「イクラ」もロシア語であり、魚卵を意味するが今は鮭の卵をバラバラにしたのを美味として鮨のネタにもなる人気である。そんな親密だった日露も、歯舞・色丹・国後・択捉の北方領土になると、恐ろしい剣幕になり、返還交渉は一歩も進まない▼プーチン首相(前大統領)が訪日し麻生首相と会談したけれども、領土解決の道筋は見えてこない。「日露双方が受け入れ可能な方法を模索する作業を加速する」で合意したそうだが、これは要するに「これからもしっかりと話し合いましょう」であって一つも新しいものはない。しかも、こんな合意はソ連崩壊後のエリツイン元大統領のときから何回となく繰り返されている▼プ首相は、歯舞と色丹2島だけを返すの主張だし、日本は4島返還が国の基本である。こんなところへ、谷内正太郎・政府代表(前外務次官)が毎日新聞とのインタビューで「3・5返還論」を述べて話題になり、喧喧囂囂の非難が巻き起こる。尤も、本人は「そんな発言はしていない」と否定しているがー▼勿論、ロシアは、この提案?に乗り気らしいけれども、日本の多数と露の共産党は「猛反対」を叫んでいるし、こればかりは夢のような早期解決は困難と見たい。どちらにしても、本籍を歯舞に移して北方領土に情熱をぶっつけた故・上坂冬子さんがー事の仔細をよく説明し得心させようとしても、ロシアは拒否するだろうし、この返還交渉は極めて難しい。  (遯)

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