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世界に広がれ「和牛」の味=サンパウロ市で国際食肉展示会=伯和牛協会も出展・PR

ニッケイ新聞 2009年7月4日付け

 第十五回国際食肉展示会(FEICORTE2009)が六月十六日から二十日まで、五日間にわたりサンパウロ市のイミグランテス展示センターで開催された。二百店以上の業界関係ブースが出展し、四千頭以上を展示。ブラジル和牛生産者協会(飯崎貞雄会長)も出展し、「WAGYU」ブランドの普及に努めた。同ブースで関係者に現状を聞いた。

 ブラジル和牛生産者協会が同展に参加するのは今年で三回目。
 米国アトランタ郊外に住む成毛達也さん(53、東京)は、自身で貿易・コンサルティング会社を営み、飯崎会長と知り合って以降同協会の活動に協力してきた。同イベントへの出展にも尽力し、審査員を務めた今回は三度目の来伯となる。
 成毛さんは、和牛の国外生産の始まりには武田正吾さんというある一人の北海道牧畜家の思いがあったと強調する。
 国外で和牛の生産が制限されていた当時、武田さんは日本の和牛を国外でも知ってもらいたいと、初めて繁殖を念頭に入れた和牛の生体の輸出を図った。
 この活動には反対する人も多く、武田さんは日本の和牛業界から除名を受けるなど困難も伴った。
 一九九五年にまず米国へ約四十頭を輸出。その後米国を拠点にオーストラリア、ニュージーランドに向け子牛、受精卵、精液を販売した。
 同年、同協会と協力して米国経由でブラジルへの輸出を開始。武田さん自身、同イベントのため来伯していた。
 同氏と協力してきた成毛さんは、「武田さんの尽力なしには、現在のように国外で和牛が普及することはなかった。その経緯を知ってもらいたい」と語る。
 現在は、ヨーロッパ諸国、中国でも和牛に関心が高まってきたという。
 成毛さんと飯崎会長は「世界に和牛の遺伝子を広め、もっと良い肉をもっと安い値段で提供していきたい」と意気込む。武田さんの思いを継ぎ、国際的に和牛の理解を深めていきたいという。
 日系レストランで牛丼、すきやき、しゃぶしゃぶ等で提供される和牛だが、成毛さんは「フェイジョアーダに使ったり、ハンバーグにして食べてもおいしいのでは」とブラジル料理での楽しみ方も提案する。「和牛には油から出る味の深みと濃さがある」と自信を持ってすすめた。
 同展示会には、サンパウロ市に四店舗を設けるレストラン・フバイヤットが参加し、同店オリジナル牛と神戸和牛をステーキにして提供した。
 同レストランでは、普段交配種の和牛を使用しているところ、今回はイベントのため特別に純粋な和牛三頭、約百二十キロ分の肉を用意。
 オーナーのセルジオ・カスチーリョ氏に話を聞くと、十六日には三百二十人が訪れ、約四割、八十皿の和牛の注文があったという。
 「和牛はおいしい。レストラン業界でヒットしている」と話すカスチーリョ氏。このようなイベントを通し、ブラジルでも和牛の味が知られるようになってきたという。
 和牛を提供するヤクルト商工社の植西暁ヤクルト牧場長によれば、和牛販売に関する問い合わせが多い中、生産が追いつかない状態だそうだ。

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