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ブラジル育ちの傘踊りが母県へ=鳥取県人会=鳥取市が11人を招待=育ての親、西谷さんも感激

ニッケイ新聞 2009年7月31日付け

 鳥取県の郷土芸能としてコロニアでも有名な鳥取県人会の「しゃんしゃん傘踊り」グループが、八月三日、母県の鳥取市から招待を受けて訪日する。十一人の訪日メンバーは八日に同市で開催される「第四十五回鳥取しゃんしゃん祭り」に参加するほか、竹内功同市長、平井伸治知事などとの交流行事も予定している。ブラジルで傘踊りが始まって今年で二十七年、母県の祭りに参加するのは初めての事だ。県人会で二十四日開かれた結団式には、長年普及に努めてきた西谷博元会長も出席し、感極まって声を詰まらせた。

 ブラジルでの傘踊りは一九八二年、来伯した母県からの研修員が披露し、踊りに使う傘を県人会に寄贈していったことを機会に始まった。
 西谷さん夫妻が中心となって会員、知人らに呼びかけ。五人ほどだったメンバーは、サンパウロ市の県人会、モジ、カンピーナス、マリンガ、第二アリアンサ(ミランドポリス)など各地へ広がり、現在では県人会だけで毎週約八十人が参加する。
 「育ての親」として普及に尽力してきた西谷さんによれば、はじめは傘がなく、箒の柄で練習していたという。「最初はうまく行かなくてね。県に手紙を書いて、テープを送ってもらって練習しましたよ」、今年九十歳になる西谷さんは振り返る。
 踊りに必要な傘がないため、知り合いの職人に頼んだり、本橋幹久現会長が訪日の際に部品を持ち帰るなどしてブラジルで作ろうとしたが、上手くいかなかったという。その後、県と鳥取市から二百五十本ずつ、さらに加藤恵久会長の時代に二百本の寄贈を受けるなど、これまでに母県側から八百本近くの傘が送られた。
 サンパウロ市に限らず、ブラジリアなど遠方での日本文化イベントにも度々出演。昨年六月に皇太子さまご臨席のもとサンボードロモで開かれた百周年式典にも参加し、母県から参加した平井知事、竹内市長ら八人とともに二百三十人で踊りを披露した。その折りに竹内市長から招待を受け、このたびの訪日が決まった。
 訪日団一行は来月八日の祭りで、二千八百人による一斉踊りに「ブラジル鳥取県人会傘踊り連」として出演する。同グループの後には、これまでに来伯した人や、鳥取のブラジル関係団体など縁の人たちが続いて踊るという。
 滞在中には知事、鳥取市長・議長などを表敬するほか、県・市・議会や民間との交流行事も予定されている。
 結団式は毎週金曜の練習日にあわせ、二十四日正午過ぎから鳥取交流センターで行われ、西谷さん、加藤前会長、本橋会長ら現役員、訪日団員を含む傘踊りグループメンバーなど約六十人が出席した。
 西谷さんは今年二月に体調を崩し、この日は車椅子での出席だったが、元気そうな姿で出席者を安心させた。現在リハビリ中のため、今回は名誉団長として訪日を見送った。本橋会長が団長として訪日する。
 本橋会長はあいさつで、一九五二年に鳥取市で起きた鳥取大火への義捐金集めをきっかけに始まった県人会の歴史を説明。その鳥取市からの招待で訪日することに喜びを表わすとともに、「西谷夫妻を中心に皆さんの大きな協力を得て、傘踊りの知名度が上がった」と感謝した。
 続いてマイクを握った西谷さんは「嬉しくて、言葉にならない」と声を詰まらせながら、訪日メンバーに「普段練習している踊りを思う存分踊ってきてほしい。将来に渡ってこうした交流が続くことを願っています」と言葉を送った。
 メンバーを代表して京野マリ良枝さんが「西谷先生の気持ちを持って日本でがんばってきます」とあいさつ。「いってらっしゃい」という言葉とともに、一同から大きな拍手が送られた。
 名誉団長として訪日、祭りに参加する西谷さんの夫人、千津子さん(84)は、「市長から招かれ、皆うれしく思っています。一所懸命に踊ってきます」と話していた。

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