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極悪非道から光の世界へ=刺青見せて回心説く=元ヤクザ親分が来伯伝道=「一日1回悪いことした」

ニッケイ新聞 2009年10月2日付け

 極悪非道な闇の世界から、神と人を愛する光の世界へ――。元ヤクザの親分が10年振りにブラジルの地を踏んだ。「25年間、(暴力団)組長として悪いことしました」と上半身裸で両肩の刺青を見せ、大阪訛りで語る吉田芳幸氏(65、大阪)は、現在はクリスチャンの伝道師として世界各国を飛び回る。9月26、27両日にサンパウロ市の命の道福音教会(仲真次セイゾウ牧師)で、特別講演「やくざの親分の回心」を行い、多くの信者と交流した。

 「どうしようもないヤクザ者たちがキリスト教に出会い、神と自らの心を信じて結成した」という特異な伝道集団「ミッション・バラバ」の元会長だ。同バラバ・サイトの略歴によれば、吉田さんが二代目組長を務めた当時、大日本正義団は日本最大の覚醒剤、拳銃の卸元でもあった。
 「新大阪戦争と呼ばれたヤクザの抗争事件があった。相手は日本一の組織でした。殺し、殺され、双方で多数の人が死んでいきました。その事件で私は5年半刑務所に服役した。刑務所を出たら3日と命がないだろうと思い、3日間をどの生きようかと思いました。出所してすぐに韓国に行き、そこで友人の紹介で出会った女性が私の妻です」(同サイト)
 吉田さんはその後回心し、映画『親分はイエス様』(01年)の主人公にもなった人物だ。
 昨年は、飛行機の経由先の米国で、やくざとしての前科があることから入国通過を許されず、ブラジルで予定していた講演は急遽キャンセルされたが、今年はドバイ経由でなんとか入国に成功。
 待ちに待った吉田さんの話を聞こうと、9月26日午後8時過ぎに行われた礼拝には信者ら180人が集まり、ときおり感嘆の声が起こった。
 吉田さんは熱心なクリスチャンの韓国人女性と結婚したことがきっかけで回心し、「女房と一緒に祈って、霊的な力を持てるようになった」と熱弁しはじめた。
 「ヤクザのときは喧嘩ばかりしてたけど、今度は悪霊と闘うのが好きになった。神がついていてくれ始めから勝つのが分かっている戦は楽しい」などと笑わせながら、自らが体験した奇跡についても言及した。
 また、「多くのクリスチャンの問題は祈らないこと。神に祈れば何でも解決する。祈らにゃ損なんです。神は常に生きて働かれてる」と勧める場面もあった。
 現在は息子が牧師を務める大阪府のベタニアチャーチで長老を務める。「ヤクザを、ものすごく真面目にやってました。一日1回は悪いことしないと眠れなかった」と笑わせながら当時を振り返り、「こんな悪い人間を変えてくれ、この場でこうして話せる機会をもらい、今はとても幸せ」と締めくくった。
 吉田さんは、同教会や姉妹教会で講演し、1週間弱の滞伯期間を終えて、日本に帰国した。

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