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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年1月13日付け

 ジェイムズ・キャメローン監督のハリウッド映画『アバター(Avatar)』を観たが、自然と人間の関係を問い直すテーマをうまく描いた娯楽大作だと感心した。特に特殊映像の出来は素晴らしいの一言▼伯字紙は、白人を初めて受け入れようとしたアメリカ・インディアンの酋長の娘ポカホンタスを似たものとして挙げたが、個人的には宮崎アニメ『もののけ姫』の世界観だと感じた。ハリウッドの映画でこのテーマが扱われたことは、一般社会で商業的にその傾向が受け入れられる基盤が整ったと判断されたのだろう▼人間中心の経済発展による自然破壊、過消費主義への反省から、米国マクドナルドに代表されるファーストフードへの対抗として、地域産の食材による手間をかけた料理を薦めるスローフード運動が生まれ、低エネルギー消費の生活スタイルへの見直しなど、先進国ではいろいろなエコロジー運動がある▼でも元々、過剰消費生活を享受していない発展途上国の一般大衆にとっては今ひとつピンとこない。ブラジルの環境運動全般にいえることだが、ファーストフードすら食べられない下層階級にとっては、手間をかけた料理は普通のことだ。盗電して裸電球で生活している家族の電気消費量は少ないし、アマゾンの森林はとてつもなく広大だ▼鉄道が普及する前に、自動車や飛行機の時代に突入してしまったのと同様、なにやら過程を一つ飛ばされた先の話をされている感じもある。この映画がブラジルの観客にどう受け入れられるのか、興味深い▼同監督の次回作は広島の原爆を扱った作品だとのニュースが流れている。大いに期待したい。(深)

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