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〃移民文化〃残したい=モジ=連邦文化財「カザロン・ド・シャ」=年内には復元完成か=中谷氏「15年目で目処ついた」=日本の伝統技術生かし

ニッケイ新聞 2010年1月15日付け

 モジ・ダス・クルーゼス市コクエラにあるカザロン・ド・シャ(お茶屋敷)の復元工事が進んでいる。保存プロジェクトを推し進めるカザロン・ド・シャ協会代表の中谷哲昇氏(陶芸家、66、大阪)によれば、資金面での手続きと工事が順調に進めば、今年中に完成する見込み。1996年に同協会を発足させてから奔走し続ける中谷氏は、15年目の実現を前にして「やっと、なんとか目処がついた」と安堵の様子をうかがわせた。

 1942年、製茶工場として日本移民の棟梁の手によって建設されたカザロン・ド・シャは、ブラジルには珍しく釘をほとんど使わないはめ込み式による木造建築。82年州政府文化財保護機関、86年には連邦政府文化財保護機関によって文化財に指定されたものの、長年管理されずにいた。
 「大部分がシロアリに食べられていてボロボロ、材木はほとんど腐って雨漏りもひどかった。でも何とか残さないといけないと思った」(中谷氏)
 同協会の第3期からなる保存プロジェクトは、2004年連邦政府文化省に認可され、05年7月に文化基金より第1期工事資金が交付され翌06年に終了。
 だが第2期は、Iphan(国立遺跡美術遺産院)との契約手続きが遅れに遅れ、工事を始めたのは昨年の11月。Iphanが25万5千レアル、同市が2万2千レアルを出資した。
 「木造建築の復元は特別な技術が必要。政府の入札で決まった企業に工事してもらえばいいってわけじゃない。資金交渉に相当の時間を費やしましたよ」と苦笑いする。
 基本建築方式は、釘を使わない丸太の組み込み式。日本から棟梁の中尾哲也氏を呼び、現在は瓦と壁を取り外し、柱の組替えなど重要な作業が続く。「普通より3倍の手間がかかる」というが、遅くても今年6月には終わる見通しだ。
 第3期工事の資金調達はまだ。中谷氏は、「地元ドイツ系企業が興味を持って、PROAC(文化事業を通して行われる州文化局の企業免税制度)を通して60万レアルが確保できそうだ」と話す。
 「9月の市制450周年に間に合わせて落成して欲しい」との市からの強い要望もあり、市長自らPROACの申請に協力、州文化局との話もついており、「うまくいけば、早くて年内には完成しそう」という。
 中谷氏は、同協会を発足させてからの15年を振り返り「気の長い話ですね」と笑いつつ、「ブラジルの『移民文化』として、人々に愛される観光地になるようにしていきたい。完成後、どう維持するかが大事」と表情を引き締めた。

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