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静岡県人会総会=反対派質問に答えず強行採決=今年も民主的雰囲気なく=荒れ模様の議事進行=「日語なく分からない」

ニッケイ新聞 2010年2月25日付け

 対抗候補に対して現会長が発言権を認めないという異例の展開で、会長再選を決定した昨年の定期総会役員改選から1年――。ブラジル静岡県人会(杉本教雄会長)は21日午前、サンパウロ市の同会館で定期総会を行ったが、杉本会長ら理事会に対して情報の公開を求める「反対派」の質問を無視するような議事進行に終始して会が進められ、古参会員は「進歩なし。がっかりだ」と顔をゆがませてあきれた。昨年の荒れ模様をそのまま引き継ぐ形での、後味の悪い会となった。

 昨年の総会役員改選で、反対派の川崎年男元理事(69、菊川市)が「カラオケ部の会計に疑問がある。コロニアの公的団体として、もっと透明にするべきだと求めても実行に移されない」などと現体制派の問題点を指摘して会長に立候補。
 だが杉本会長(63、二世)は、事前に理事会が選挙規約を作り、川崎氏のシャッパを無効とし、発言権すら与えずに自分のシャッパを着席承認で通すという、強行採決で終わっている。
 今年度総会には60人が出席。杉本会長が議長、書記は杉山久司副会長(ポ語)と加藤武男理事(日語)が務めた。
 昨年度の事業報告を読み上げず着席承認した後、昨年度決算報告で、「トイレ工事の会計詳細を」と川崎氏が求めると、杉本会長は「維持・保存費(1万9469レアル)の中に計上されていて、詳細は理事会で承認している」と回答を拒否し、「賛成の人は挙手」と強引に採決を行って、票さえ数えずに承認するなど異常な雰囲気が漂った。
 総収入は19万2452レアル、総支出は16万5987レアル、繰越金は2万6464レアル。
 10年度予算は16万8730レアル。カラオケ部の予算収入が寄付金の中に含まれていることに対して、「会の活動なら会計を明確に示して欲しい」という川崎氏に、「疑ってかかるような質問に答えるわけにはいかない」と杉本会長は声を荒げ、あっという間に着席承認した。
 10年度事業計画を承認後、評議員改選で単一シャッパが読み上げら、杉山副会長と鈴木幸男、石切山節子、山本茂氏という現理事の名前が入っていることに対して会員の中から質問が出ると、杉山副会長は、「13日に辞職したので問題ない」と説明、辞職書を読み上げた。「リストを配り説明を先にすべき」と意見もあったものの、そのまま着席承認した。
 清原健児会計士がIPTU滞納について2000年から08年までの審査証明を今年1月に受けたことが報告され、03年度の滞納により封鎖されている口座(約4万5千レアル)の解除は、「時間の問題」と説明した。続いて優良移住者表彰、高齢者表彰が行われて閉幕した。
 総会後、60代の一世会員は、「質問の答えを誠意のあるものにして欲しかった。県に誇り持っているのに先が思いやられる」。溝江孝子さん(74、掛川市)は「答えが出てない。きちっとしたやり方でやってかないと」と顔を曇らせた。
 父が会長を務めていた望月二郎さん(63、二世)は、「創立者たちの気持ちを忘れている。一生懸命やった人はみんな(嫌になって)出てしまった」と述べ、後藤宗治相談役(85)も「日本語じゃないから分からない。時代がかわった。でも仕方ない」と話していた。

■記者の眼■=県人会本来の役割は何か

 昨年の総会で川崎氏が問題提起したカラオケ部の会計明朗化は無視され、今回も報告はなかった。そんな疑問を声にだす〃中立派〃もいない。何故なのか。
 今総会で清三枝子・元社交理事兼婦人部長は、「(昨年の選挙で)婦人部長を辞めさせられたことは直前まで知らなかった。何の通知もなく引継ぎも何もしてない」との疑問を投げかけたが、杉山副会長は「役員会にも参加せず、反対派だから」と回答し、清さんは口を閉じてそれ以上反論せず、そのまま席についた。
 総会後、杉本会長と鈴木渉外理事は「(清さんは)08年の中ごろから役員会に出なくなり、活動に協力しなくなったから当たり前でしょう」と記者に同意を求めたのだが、出席簿を確認すると、09年の総会直前まで9割近く出席サインがされていた。
 さらに現在同職に名前を連ねている理事本人は、「仕事が忙しい」(本人)という理由で、役員会にも総会にもほとんど出席せず、名前だけの理事になっている。
 つまり、本来は会員同士の親睦を図る場所であるはずなのに、反対派と見なされると仲間はずれに合うという妙な雰囲気が現体制に漂っており、会長による議事進行の強引さがそれを如実に表している。
 母県からは今年も70万円ほどの助成金がおりる。県人会の本来の使命はなにか。県人同士の親睦を図るような活動は活発に行われているのか。地の利が好いことにあぐらをかいて、場所貸しが活動の中心の団体になっていないか。一世が少なくなり母県との関係が薄れていく中、各県人会の役割が問われている。
 今回は〃体制派〃の杉山元副会長、鈴木渉外理事ら4人が理事を辞職、評議員シャッパに入り承認された。来年の役員選挙は新評議員長が議長となり、同じような総会になるかもしれない。(親)

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