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一家4人で始まった剣道指導=28年目の佐賀「葉隠」道場=岸川夫妻「死ぬまでがんばる」

ニッケイ新聞 2010年3月10日付け

 佐賀県人会館の「葉隠道場」で剣道と居合道を教えるのは岸川吉朗さん(74、佐賀、七段教士)と道子夫人(71、佐賀、六段)。1982年9月から始め、27年が経つ。きっかけをつくったのは、その年、ブラジルで初めて行われた剣道世界大会に日本代表として来伯した佐賀県出身の剣士・桜木哲史選手だった。

 桜木選手は県人会に「佐賀県人会はこんな立派な会館をもっているのに、何も使っていない。是非剣道を教えてください」と語ったという。それから岸川さんに話があったことで、始めるようになった。しかし当初は生徒が集まらず、長男のジョルジさん(46、二世、七段教士、現・二天古武道研究所主宰)や次男のロベルトさん(44、二世、七段錬士、香港在住)らがパンフレットを自ら作り、近所に配り歩いて生徒を集めたという。
 始めのうちは自腹を切って防具や道具を揃えた。ブラジルに剣道がまだ普及していなかった時代だ。1回目の稽古は家族4人で教え、現在、段位にすれば計27段にもなる贅沢な教師陣。吉朗さんは「当時は日系ばかり、商社に勤める子弟が多かったね。100%日本人で、日本語で指導をしていた」と振り返る。
 さらに「俺は戦中・戦後を貧しい時代に過ごしたから耐える力がついている。だから稽古は厳しく、倒れる者が続出したよ」と、眼光鋭く語った。
 現在では「約40人の生徒中、90%が非日系人、すべてポ語で指導しています。指導の仕方は、少しはおとなしくなったかな」と語る。
 最近では強さだけではなく、日本文化や侍の思想を訪ねてくる人が増えてきて、インテリ層が多いという。岸川さんは「侍について、鎌倉幕府から明治維新などの日本史のほか、新渡戸稲造の著書『武士道』などを含め説明します。みんな熱心ですよ」と最近の生徒の様子を述べ、「この道場のおかげで家族の絆が強まった。死ぬまで続けますよ」と笑顔をみせた。
 葉隠道場の稽古は毎週木曜日午後7時、土曜日午前10時から。佐賀県人会住所は、Rua Pandia Calogeras, 108

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