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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年3月10日付け

 「どうしたら日系団体が存続するか」との声は耳にタコができるほど聞いているが、意外に単純なことが実践されていない。「子供向けの活動」だ▼日系団体の多くは一、二世の同年配を中心とした親睦娯楽の会となり中高年ばかり集まるので、いつまでも後継者が育たない。どうしたら若い世代の居場所が作れるか。多くの地方文協において、唯一の子供向け組織が日本語学校だ。地方では運営資金を負担としてどんどん学校が減っていると聞くが、今こそ考え直したい▼教室の中で日系同士が子供時代に楽しい時間を過ごすことの意味は、50年経ってから現れる。今学んでいる子供たちが移民150周年時に60歳前後、祭典の中心世代だ。子弟向けの日系活動がほぼ日本語教育だけになってしまっていることを思えば、1世紀半の節目が盛大に祝えるかどうかの鍵は、教室の中にあるといっても過言ではない▼先日ピラール・ド・スル農畜産展で子供たちの和太鼓を聞いた。直前にやった大人のブラジル人楽団に比べてもリズムがしっかりしており、躍動感にあふれていた。音楽、体育などの情操教育がないブラジルの公教育において、地方文協の日本語学校の活動、和太鼓やYOSAKOIソーランの練習が日系子弟に施している集団行動やしつけ、情操教育などの意味は大変大きいと痛感する▼人格形成をする10歳前後の5年、10年間に養われた日系意識、日本文化への好意的な印象がその後の一生を左右する。彼らは大学受験を機にいったんは日系社会を離れても、定年したころにまた戻ってくれる。百年の節目を超えた今こそ長いサイクルで将来を見通したい。(深)

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