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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年4月23日付け

 提携紙の静岡新聞からの連絡で、あのミサキさんが亡くなったことを知り驚いた。さぞや無念であったろう。元妻と息子2人を殺され、容疑者は帰伯逃亡した。家族まるごとを一気に失い、抜け殻のようになっていたのか▼ミサキ・マルシリオ・コウイチさんはサントス出身。06年12月に静岡県焼津市で起きたブラジル人母子3人殺害事件で、一人生き残った日系の父親だ。日本政府からの要請に基づく国外犯処罰で訴えられ、08年1月にサンパウロ州西南部サルタイア市で逮捕されたのはバストス市出身のエジルソン・ドニゼッチ・ネベス被告だ▼同2月にサンパウロ市内で初公判が行われ、被告が完全黙秘を貫く様子に、わざわざ日本から傍聴にきたミサキさんが「ディスグラッサード」(人でなし)と声を荒げた姿が目に焼き付いている。あの時、「悔しい。何を考えているのか分からない。何も反省していないみたいだ」と目に涙を浮かべながら話し、「できることなら私が殺したいぐらいだ」と怒りの表情をみせた。「判決が下る裁判にも来るつもりだ」と語っていたが・・・▼報道に接する限り、ネベス被告は自白していない。先のイザベラちゃん事件の裁判もそうだったが、ブラジルでは90%間違いないと考えられる場合ですら、被告は平気で犯行を否認する。性善説を信じる日本人からは信じられない態度だが、これは良い悪いではなく、そういう文化とでもいうべきものだ▼世界がグローバル化し、当地の移民が日常的に体験している事柄が、日本にも深く関係するようになった。せめてミサキさんが待ち望んだのに近い判決が出る日を見守りたい。(深)

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