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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年5月5日付け

 聖市の有名日本食レストラン『藍染』の小池信 也シェフが以前、講演で「日本以外の諸外国で、ブラジルが一番農産物が充実している。日本移民のおかげ。これだけ日本食材が揃っているところに来られて本当に良かった」と語っていたが、まったく共感する▼先日たまたまピエダーデの西尾夫妻が生産している富有柿をたべる機会があり、その重量感、整った形、ムラのない色、絶妙な歯ごたえ、過不足ない甘さに驚いた。季節が始まったばかりだが、逸品というに相応しい▼日系農家の実力を舌で思い知らされた。このような品からは、単なる食べ物である以上に「量より質」という考え方、それを支える技術や丹精ぶり、この農法を選ぶ生き様を感じさせられる▼もちろん「そこそこの品質で大量生産し安く売る」ことを非難するつもりはまったくない。大量生産ができることこそ当国農業の強みだからだ。事実、安月給の邦字紙記者では「極上品」には手が出ない。「そこそこ」の品でも十分に柿の味はするが、西尾夫妻のそれはまるで別のモノのようだった▼ラーモス移住地などで有名な和梨、サンミゲルの甘いイタリア葡萄、トメアスーの濃厚なアサイなど日本種でなくとも日本的農法や精進が込められた品を、外国で味わえることは尊い経験だ▼大変な手間をかけた割には利益が薄いのではないかと危惧する。日本なら少々高くても「魚沼産コシヒカリ」のように売れるだろうが、当地ではそうもいかない。「悪貨は良貨を駆逐する」傾向の強い世の中だが、小池シェフの言う通りこのような農産物は貴重だ。次世代にも受け継がれることを切に願いたい。(深)

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