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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年9月12日付け

 「野良犬コンプレックス」(Complexo de vira-lata)とは、8月に生誕百周年を迎えた劇作家ネルソン・ロドリゲス(1912—80年)が残した、ブラジルの国民性を象徴する有名な言葉だ。1950年、ブラジル初開催のサッカーW杯の決勝戦、満員のマラカナン蹴球場でウルグアイに惜敗した時、念願の世界一になれなかった劣等感をそう表現した▼ブラジルエリート層は30年代まで白人至上主義を標榜した。イタリア移民などの白人系を懸命に導入し、黄禍論を唱えたりしたのは、実際の国民の半分以上が黒人奴隷の末裔やインディオの混血であった劣等感の裏返しともいわれる▼58年のW杯で初優勝し、さらに62年には連続2回目の優勝を飾って、サッカー世界一のイメージを定着させた。その時の立役者がサンパウロ州出身の主将ベリーニ、黒人ペレやジジ、インディオの血をひくガリンシャであり、「混血主義」の優位性を国民の心に刻んだ▼それでもレーガン米大統領時代にボリビアと勘違いされたり、先進国首脳が「ブラジルの首都はブエノス・アイレス」と発言したり、欧州クラブで活躍するブラジル人選手が「猿」との罵声をあびるたびに、この思いが頭をもたげるようだ▼この連続優勝のあと、70年に3度目の優勝を果たして国民の支持を強めた軍政は、85年まで政権を継続させた。その後は四半世紀もの空白を経て次の一巡りが始まった。94年、02年に続き、14年に地元で3度目の優勝を狙うことでPTは長期政権化を期待している▼いつの間にか〃野良犬〃がBricsという〃血統書付き〃に変わるとは、さすがのネルソンも想像出来なかったに違いない。(深)

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