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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年7月4日付け

 今晩、南米王者を決めるリベルタドーレス杯決勝戦第2戦がサンパウロ市で行われるため、報道はこの試合一色だ。どんな競技でも伯亜戦は盛り上がるが、人気最強のコリンチャンスと、亜国の最強豪ボカだから注目度は高い▼コリンチャンスの創立は1910年9月、5人の工場労働者が英国人のサッカーの試合を観戦したあと、「俺たちもやろう」となったことが契機だとか。その時に見たのが英国のアマチュアチーム「コリンチャンス」メンバーの試合だったようだ▼応援組織はいくつもあるが、最多なのは「ガビオン・ダ・フィエル」で会員は9万人。サンバチームでもあり、パレードの直前に行われる「雄叫び」は、日本人が聞くと演歌に聞こえる独特の節回しをする。「ポデローゾ・チモン」という公認用品販売店があり、全伯に100店以上も展開している。ファン数は3千万人といわれる▼先日、グローボ局で英国の本家チームを訪ねて行く報道があった。今もアマチュアであり、英国内ですら知られていないとか。今ではブラジルの方が国際的な知名度を持っている。負ければ負けるほど熱く燃え上がるファンの情熱は、どこか阪神ファンにも似ている。信仰的な熱い情熱をもって支持される稀なクラブだ▼サッカーの応援風景を見ると、一種の宗教儀式に思えてならない。普段は我が侭で利己主義的な個人が、サッカーという儀式においては無意識に集団に身も心も委ね、カタルシスを発散させてすっきりする。きっとこの消費層をつかんだ企業は成功するし、政治家は幅広い支持が期待できる。サッカーに見る国民性研究を誰かにして欲しいものだ。(深)

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