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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年9月11日付け

 池波正太郎の「剣客商売」は面白い。老剣客・秋山小兵衛の剣技もながら老中・田沼意次との対話が真にいいのである。将軍・徳川家治に抜擢され6百石から5万七千石にまで昇進した人物で「賄賂政治家」の評判も高かったが、近頃は商業主義を認めた名宰相だとし、あの時代は贈収賄が普通に行われていたの指摘も多い。と、「政治とカネ」の縁は限りなく近い▼明治になると「山城屋事件」がある。長州出身の山城屋和助が、陸軍省から無担保で65万円を借り、投機に失敗し返済できなくなり、陸軍省内で割腹自殺するの事件だった。明治5年のスキャンダルであり陸軍中将・山県有朋中将が関与したの噂があったけれども、この65万円は当時の国家予算の1%を超えるとされるほどの巨額なものだったが、和助が関連書類を焼却したこともあって事実関係は不明な点が多い▼こんな醜聞は何処の国にもある。ブラジリアのアルーダ前知事は、清掃業者の使者からぶ厚いキャッシュの束を掴み取るようにした現場を撮影され、これがTVで放映されたものだから視聴者はびっくりし大騒ぎになった。こうした政治家の汚職に国民は顔を顰めるけれども、この醜態は後を絶たない。先頃は政界の暴れん坊・浜田幸一元議員が詐欺の疑いで逮捕、起訴された▼今度は、鈴木宗男衆議が受託収賄罪で実刑となり、議員を失職し刑務所に収監される。政界の牛若丸・山口敏夫や中村喜四 郎、村上正邦が背任や収賄の疑いで失職し収監されているが、これほどに政治とカネの腐れ縁は深く爛れている。(遯)

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