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「勝者の秘密」講演再録=650万部のベストセラー作家

特集 2010年新年号

ニッケイ新聞 2011年1月1日付け

 国際就労者情報援護センター(CIATE=二宮正人理事長)が11月6日に主催した国際シンポジウムのとりを飾ったのが、新屋敷ロベルトさんの講演だった。今までに著書は17冊もあり、累計650万部を売り上げるブラジル屈指のミリオンセラー作家で、引っ張りだこの自己啓発講演家、心理カウンセラーとしても知られている。特に『Sucesso ・ ser feliz』は140万部を超え、大きな話題になった。日本でも邦題『パピネス』(SOLブックス刊、09年)として好評発売中だ。新年を迎えるにあたり、あらためてブラジル屈指の日系著名人の話に耳をかたむけてみよう。(編集部)

お金より人間関係

 人生において最も大事なのはお金より倫理、愛だ。人には成功することより大事なことがある。常に守るべきは自分の生活である。生活とは家族であり愛であり、それ以外はすべて〃残り〃と言っていい。人生の真理はシンプルだ。
 私は勝者が大好きだ。何がその人を勝者にさせるのかを、6歳の時からこの50年間ずっと考え続けてきた。その結果が前言である。
 私はつつましい家庭に生まれ育った。祖父は酒を飲みすぎて早死にした。母は家政婦で、サンパウロ市ビラ・マルガリーダ区の小屋みたいなところで育った。父(日系二世)は貧乏だったが、貴族のように振舞おうとするところがあったが、母は現実主義者だった。
 50年前、父はそれまでの家賃生活をやめ、なんとか家を買おうと言った。母の勧めで貧しいビラ・マルガリーダ区にわずか4メートル四方の掘っ立て小屋を立てた。雨漏りするし、自分の部屋と自分のベットがほしかった。でも友達もいっぱい遊びにきた。狭いとは思わなかった。

金を得るのは顧客の問題を解決するから

 ある企業のオーナー社長が役員会でこういった。「この会議に問題を持ってくるな。解決策を持って来い」と。それを聞いた役員はこれ幸いとばかりに、問題を報告にきた部長に同じことを伝えた。その部長はさらに課長に、課長ははさらに平社員に、平社員は唯一の部下であるトレイニー(研修生)にそれを言った。つまり、誰もを解決しようとしなかった。こんな会社はダメになる。
 ブラジルで2番目に資産家といわれる男が会議を開いた。彼は部下を前に「みんながいい仕事をしていることを知りに来たんじゃない。どんな問題があるか、顧客が何を必要としているかを知りに来たんだ」といった。
 会社や顧客は問題の解決策を求めている。ソレイユというサーカスがある。行き詰って、田舎周りしかできないと思われていたサーカスが、この発想によってまったく変り、世界中でチケットを取るのが難しいようなサーカスを実現した。
 それを考え出すことで、あなたにはお金がまわってくる。コスト削減は誰にでもいえる。逆に高い金を払いたくなるサービスを考えることだ。
 外科医だった時、私が担当した患者は誰一人として亡くならなかった。それは私の上司が、私の能力以上の患者を与えなかったからだ。弁護士だったら能力以上の弁護をしないこと、これが大事。手術が終わったら、うまくいったと感謝の祈りを捧げる。外科医の誤りには命がかかっている。同じように講演者として間違ったことをいってはいけないと思っている。

常に可能性を信じろ

 2メートル級がぞろぞろいる米国のバスケットボール界で、身長が177センチしかないマグシー・ボグス(Muggsy Bogues)選手が私のアイドルだ。マイケル・ジョーダンは素晴らしい。でもボグスもトップの中のトップだ。
 彼は素早く地面を這っていくようなドリブルが得意。これは身体の大きな選手が防ぐことは難しい。彼は自分の弱点を、強みに変えた。弱点を凌駕する技を身につけた。
 奇跡を常に信じなさい。ビラ・マルガリーダの家政婦の息子が、こんな有名人になっているのは奇跡じゃないか。私が子供の頃、「医者になりたい」と言った時、母は信じてくれたが、周りの人は「薬局に勤めるのがせいぜいだろう」といった。私は奇跡を信じる。だから今どこにいるかは気にするな。どこへ向かっているかを大事にすべし。

幸せになる努力を忘れない

 60万人が私のサイトを常時見ている。新聞に書けば10万人がそれを読む。私が広めたいと思っている内容を、みなが求めている。それは「勝つ理由のある人が常に勝利する」ということ。
 終末医療の現場では9割の人が不幸な気持ちのまま死んでいく。友人とビールを飲むことより、子供にキスをし「愛している」と口にすることを忘れてはいけない。
 日本では「高い木ほど深く根を張っている」という。幸福になるには、足元がしっかりしていなければいけない。そして賢い人は、常に両親に感謝の念を持っている。
 確かに近代な技術は生活を便利にするが、人はインターネットなどのテクノロジーでは幸せになれないことを肝に銘じておかないといけない。

新屋敷ロベルトさん

 【Roberto Shinyashiki】58歳。祖父が鹿児島県出身の日系3世。94年に留学生として訪日したのに始まり、この11月にインベル社の招待でペレと一緒に訪日。長期間にわたって在日ブラジル人の悩みに関して一緒に考えてきている。外科医として職歴を始め、その後、心理カウンセラーとして州知事、他国の大統領、有名スポーツ選手、シドニー五輪ブラジル選手団なども支援し、企業コンサルタント、ベストセラー作家、人気講演者など多彩な活躍をしている。

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