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「会館が流されたかも・・・」=リオ州山間部の大水害で=育種工場濁流にのまれる=今のところ人的被害なし

ニッケイ新聞 2011年1月14日付け

 昨年元旦はリオ州のイーリャ・グランデで起きた土砂崩れで日系人の経営するポウサーダが全壊して人的被害も甚大だったが、今年は同州山間部のセラーナ地域では洪水や土砂崩れの戦後最大規模の被害(13日午後2次現在で381人死亡)が出ており、地元日系人にも一部影響が出ていることがニッケイ新聞の調べで分かった。最も被害が大きかったノヴァ・フリブルゴ市では13日正午現在でも町全体で電話が不通で連絡が取れない状態、ペトロポリス市では大規模な日系育種工場が跡形もなく流され、テレゾポリス市では日系クラブ会館が崩壊している可能性があり、地元では心配する声が上がっている。リオ総領事館の調べでは13日正午現在で「今のところ人的被害はありません。引き続き調査中です」としている。

 「会館が川沿いに建っていて、その川の水位が1メートル半も上がったと聞きました。流されていないか心配で今日の午後見に行ってくれることになっています」。テレゾポリスで日本語教師をする蔀(しとみ)ヨランダさん(63、サンパウロ市イタケーラ生まれ、二世)は電話口で心配そうな声をあげた。「30年もここに住んでいるけど、こんな酷い水害は初めて」。
 昨年暮れの忘年会では、セントロから5キロぐらい離れた所に2000年頃に建設された新しい会館に300人もが集まり、楽しい時間を過ごしたばかりだった。
 同地には130日系家族が住んでいる。昨年まで夫・清水和雄さん(70)が会長をしていた喜美江さん(63、3世)は「うちを含めこの辺は葉野菜を作っている日系農家が多い。この大雨で畑が水に浸かった人もいる」という。清水家は70数年前に住み着いた同地草分けの日系家族だ。
 清水さんは隣町のノヴァ・フリブルゴに12日から繰り返し電話しているがまったく通じず、「どうなっているか心配です」という。すり鉢状の地形になっており、町全体が床上浸水のような状態だという。13日午後までニッケイ新聞からも同協会会館や会長宅など数カ所に繰り返し電話したが不通のままだ。
 一方、ペトロポリスはリオが首都だった時代に夏の間だけ首都機能が移転された避暑地として有名で、駐伯第3代公使・杉村濬(ふかし)氏の墓がある。同地日本人会会長の安見(あみ)清さん(70、茨城県水戸)は「公使の墓があるセントロ付近はまったく被害なし」という。
 前2市に比べて被害が少なかったペトロポリスだが、山間部で勝本さん(名前不明)が経営していた育種工場が濁流に跡形もなく流されたという。「勝本さんは夜泊まらない、自宅に帰るといっていたので大丈夫だと思うが、まだ確認が取れていないので少し心配している」と安見さん。
 在リオ総領事館も12日から現地邦人に連絡を取りつづけており、13日正午現在で「今のところ人的被害は出ていない」としている。現地警察にも日本人被害に関する情報があれば教えてくれるように手配済み。テレゾポリスの邦人は33人、ノヴァ・フリブルゴは53人、ペトロポリスは25人(昨年10月現在)が登録されている。
 まだ行方不明者も多く、今後の状況次第では被害が拡大することも予想され、まだまだ予断を許さない状況のようだ。

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