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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年1月19日付け

 伯要人の文協来館としてはガイゼル大統領以来という鳴り物入りの門出を飾った帰伯労働者情報支援センター(NAITRE)。伯労働省からISEC(文化教育連帯学会、文協の一部)が受託した共同事業だが、資金が出るのはわずか10カ月間であり、その後が不透明だ。その間に2千件の支援受付という条件をこなせば次の出資もあるかも知れないが、確約されてはいない▼ISECが引き受けるまでにも紆余曲折があった。元々ルーラ政権中に開所する予定だったが、日系社会内で受入れ先が決まらなかった。というのも帰伯労働者支援事業はグルッポ・ニッケイ(以下GN)が99年からやってきた事業だ。GNに最初に話がいったが「10カ月間」という不安定さが踏み切れない障害となった。GNにしてみれば10年以上の歳月をかけて組織を作ってきたし、今さらコロニア御三家の審議会を上に頂いて、いちいち承認をえるような運営方式に変るのも煩わしい▼かといってCIATE(国外就労者情報援護センター)は日本へ送り出すための団体であり、帰伯者向けではない。また日本労働省の外郭団体だから、別の国の事業を受託するのも難しい▼さらに援護協会にも話はいったが理事会で否決された。堅実な運営で定評のある援協にとって未知の分野に手を出すのはリスクが高いとの判断だろう▼その結果、ISECが最終的に引き受けた。とはいえ上手にやっていけば、文協が首都ブラジリアとの強い絆を築き、新しく生まれ変わる一助になる。一般社会における日系人の存在感を高める役割は設立当初からの文協の意図だった。いまこそその時だろう。(深)

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