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「狂った女王」と呼ばれ始めたボウソナロ

ボウソナロ大統領の風刺画像(twitter)

 「ボウソナロ大統領の言動がおかしい」。それは、コロナウイルスの状況がひどくなればなるほど、とりつかれたように持論にしがみつくばかりで、「感染したくない」という国民の気持ちから離れ、コロナに関する国際的な常識からも完全に逸脱してしまっている。そんな現在の大統領の状況を見ればそう思わざるをえないのだが、ここにきて、外国のメディアもそのように捉え始め、伯国政府の真相を暴きに来はじめている段階に入っているから厄介だ。

 それはイタリアの大手新聞「ラ・レプッブリカ」紙4日付が、現在の伯国の政治に関して、「軍人閣僚たちが、ボウソナロ大統領に重要な決定を下させないようにし始めている」と報じ、さらに「現在の実質的な伯国の大統領はバルテル・ブラガ・ネット官房長官だ」とまで報じたのだ。
 この前日の3日には、アルゼンチンのジャーナリスト、ホラシオ・ヴェルビツキウジがラジオ番組の中で「アルゼンチンの軍人が伯国の軍部から聞いた話」として、ほぼ同じ内容のことを話しており、それをラ・レプッブリカ紙が再確認した形となった。このイタリアでの報道は複数の言語に翻訳され、大きく報道されている。
 いみじくも6日、こうした報道を裏付けるようなことが実際に起こってしまった。それは、国民の支持率76%と大人気の保健相をボウソナロ氏が妬みから無理矢理に解任させようとした際、それを思いとどまるよう説得したのがブラガ・ネット氏だったというのだ。
 この件が起こった直後から、ネット界隈でボウソナロ氏には「Rainha Louca(狂った女王)」というあだ名がつき、その言葉は6日と7日にツイッター・トレンドの上位にランクした。
 そもそも「狂った女王」とは、18世紀末から19世紀初頭のポルトガル女王、マリア1世につけられたあだ名だ。この時代のポルトガル王朝は、フランスのナポレオン侵攻を恐れ、植民地だったブラジルに王室を移すなど、歴史的な激変期に置かれていた。
 その当時、マリア1世は精神を病んでいたので政治的判断ができず、実質、息子らが政治的実権を握っていたという歴史的事実にちなんでいる。
 そのあだ名がボウソナロに関連付けられたキッカケとしては、昨年、大統領になったにもかかわらず、自分が考えた法案がなかなか通らない状況にあった時、ボウソナロ氏が「英国女王みたいな象徴職の大統領はごめんだ」と発言し、それが笑い話的に大衆受けしたことがあった。
 最近、出回っている「狂った女王」のネット状のミーム(冗談画像)でも、ボウソナロ氏とエリザベス女王の合成写真が頻繁に使われている。
 軍人閣僚は、ボウソナロ氏を女王のような象徴職にとどまらせようとしているが、現実はそう甘くはなさそうだ。ボウソナロ氏には次男カルロス氏を筆頭としたネットの「嫌悪部隊」がいて、大統領が批判されたタイミングで、すぐさま批判した相手を倍返しで反撃するシステムが出来上がっている。
 さらにボウソナロ氏自身も、どんなに批判を受けようが政見放送や大統領令を連発して、たとえ不発でも絶対に自分の考えを曲げようとせず、それがゆえに自身も信者も脱線し、主張がどんどん世の常識からかけ離れたものになっている。
 こういう状況は果たしてどこまで続くのか。また、仮に大統領の思うまま隔離政策が終わらされ、クロロキンがコロナ治療薬として当たり前に使われ始めたとしたら…。想像したくない。(陽)

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