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人間アンドウ・ゼンパチに迫る=27日から連載開始

ニッケイ新聞 2011年1月22日付け

 アンドウ・ゼンパチ (本名・安藤潔、1900—1983)は邦人社会の文化的発展を願って、半生にわたり唯物史観の立場から言論活動に携わった人物である。
 著述家、評論家といえば聞こえはよいが、ペンを飯の種にするというのは容易なことではない。邦人社会で、日本語教師や新聞記者などインテリがつく仕事は薄給の代名詞だからである。
 アンドウは清貧に甘んじ、己の志を貫いた。ペンネームの「ゼンパチ(全八)」は、カネに縁がない男だからといって「金」という漢字を分解したことに由来するという。
 この世に送り出した著作は、名著『ブラジル史』をはじめ、『日本移民の社会史的研究』、『Gramatica da Lingua Japonesa』(日本語文法)など多岐の分野にわたる。
 「頭で働いて、日本移民に役立つ人間になれ」という旧制中学の恩師の教えが、アンドウの原動力となった。
 アンドウはいつも身なりを整えたスタイリストで、葉巻をくわえて唯物論を語る姿はダンディーな紳士そのものだった。
 またロマンチストとしても知られ、59歳のとき、約30年ぶりに初恋の人と再会して、かつて果たせなかった思いをとげている。
 昨年が生誕110周年だったことから、アンドウの歩んだ人生に光を当てた。
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 本紙元記者でサンパウロ人文科学研究所理事の古杉征己氏がまとめた評伝『アンドウ・ゼンパチ』をブラジル日本移民史料館と古杉氏の了解を得て、27日付けから本紙に転載する。
 なお、今月28日まで同史料館9F(Rua Sao Joaquim, 381)で「アンドウ・ゼンパチ展」が開催されている。

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