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NHKのど自慢=ブラジル人が2年連続で優勝=斉藤さん=チャンビオン大会で=「前川清より上手かった」

ニッケイ新聞 2011年3月10日付け

 2年連続でNHKのど自慢チャンピオン大会優勝者がブラジル人という快挙が起きた。今月5日に東京・渋谷NHKホールで行われた「NHKのど自慢チャンピオン大会2011」では、埼玉県川口市在住の日系ブラジル人・斉藤光壱さん(こういち、39歳、Valter Koichi Saito)が見事優勝を勝ち取ったのみならず、パラナ州ロンドリーナからわざわざ駆けつけた両親が舞台に上がると涙で歌が一瞬止まり、その深い喜びの込められた表情に会場は深い感動に包まれた。

 「オブリガード! ジェンチ」。優勝曲「花の時・愛の時」(前川清)を歌い終わった斉藤さんはマイクを通してそう語り、会場に駆けつけたブラジル人応援団に感謝した。
 インターネット上のあちこちのブログや掲示板には、「女性審査員まで泣かせるほどの秘めたパワーが感じられたので、ぼくは『彼がグランドチャンピオンになるのではないか』とすぐに予想がつきました」「プロ歌手・前川清よりも遥かに上手かった」「歌に心がこもると、こんなにも胸を打つものなんですね。今の日本人が忘れてしまったやさしさや、礼儀を日系ブラジル人の斉藤さんに教えられた気がします」などと書き込まれている。
 日本のアウテルナチーバ誌(ポ語)サイト5日付け記事で、斉藤さんは「優勝できるとは予期していなかった。だってみんな凄く上手い人ばかりだったから。あの舞台に立てただけでもう僕の夢が実現された気持ちだった」と語っている。
 同チャンピオン大会ではデカセギ中だったジョー平田さんが93年度に初めて優勝し、現在当地で歌手活動をする。09年度にはロベルト・カサノバさんが優勝、今回は続けて斉藤さんがブラジル人として3度目の栄冠を勝ち取った。
 斉藤さんはパラナ州ロンドリーナ市で生まれ育った三世。城間ミチ歌謡教室で習い、その生徒を中心に結成された「グルッポ・サンセイ」の創立者の一人でもある。その後、1990年に日本に移り、93年から東京でライブをするようになった。95年は同のど自慢の埼玉県大会で優勝したが、チャンピオン大会に出場できる15人には選ばれなかった。その後も出場希望のハガキを出しつづけ、昨年ようやく再出場の夢が叶い、埼玉代表として今回のチャンピオン大会に出場していた。
 グルッポ・サンセイ理事で、斉藤さんの幼馴染みの古川クラウジオ静夫さんは、「彼はものすごい頑張り屋でとても優しい性格。今回の歌にはそれがよく表現されていた。グルッポ・サンセイのみんなで彼を応援していたので、優勝したことは自分のことのように嬉しいです」と電話口で声を弾ませた。
 YOSAKOIソーラン全伯大会で4回も優勝したほか、マツリダンスを広めるなどの目覚しい活動をするグルッポ・サンセイ。その中から新しいヒーローが生まれた。
 全国カラオケ指導協会のブラジル総本部長・島田正市さんもNHK国際放送で中継を見て、「上手だった。ブラジルの歌のレベルの高さを示すもの」と喜び、「日本での大会優勝者はすでに何人もいるがプロは少ない。ぜひプロになってほしい」とコメントした。

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