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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年5月12日付け

 松下政経塾というのがある。故・松下幸之助氏が1970年代の初めに私財70億円を投じ設立したものだが、今や政界で重きをなしている。松下氏はソケット造りから始めた電器会社を1代で世界的企業にのし上げ経営の神様と呼ばれ、政治に対しても厳しい意見をもっていた。その中の一つ。政府は貯金に努め、その膨大な資金を活用し、つまり利子を予算に使い、税金のない国を建設する—というのがあり、話題になったものである▲この素晴らしき夢は未だ実現してはいないが、日本の新聞やマスコミの政治欄を見ると、国政の記事には、塾で学んだ人々が毎日のように登場し、さながら幕末の松下村塾を思わせる印象が強い。松下幸之助翁の政治への考え方もあるだろうし、競争率20数倍の狭き門を突破した若い人々も、政治志向が多く、現在、衆議31名、参議7名がいる▲しかも、前原誠司、玄場光一郎両氏や自民党の逢沢一郎・国対委員長など超有名人が多い。前原氏は民主党代表も務め、次の総理大臣と目された若手のホープである。民主党政権では外務大臣として、日本外交の立て直しに懸命だったのに—韓国人女性による5万円かの違法献金が明らかになり苦渋の引責辞職に追い込まれてしまった▲石原慎太郎氏の後継者として都知事選に立候補しようとした松沢成文氏(神奈川県前知事)や東日本大震災で罹災者の救済と支援に汗を流す宮城県知事・村井嘉治氏も防衛大学を卒業してから学んでいるし、近い将来の政界地図には松下政経塾で鍛えた人々が所狭と広がる。と—そんな気もするのだが、どうだろう。(遯)

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