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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年7月23日付け

 片手でりんごを握り潰し、100キロまで測れる握力計の針が切れていたの怪力。左を差し右上手を取れば万全の強みを発揮し幕内優勝5回。この名古屋場所の千秋楽には39歳を迎える大関・魁皇が土俵にさようならし、親方・浅香山に就任する。九重親方は「引退の美学」と称えたが、魁皇の身の引き方は眞に潔い。横綱・白鵬は「(魁皇の)体はボロボロ」と語り「それでも土俵で頑張った」と褒める▼最近は「九六大関」の声もあったが、これも腰を痛めた持病があったからだし、フアンは惜しみなく拍手し魁皇の相撲を大いに楽しんだ。初土俵は横綱・曙、若乃花、貴乃花と同期。この3力士は5〜6年で大関になったが、魁皇は12年半もかかる遅咲きながら土俵に渋い光を放ち人気を高めた。そして—通算勝ち星1046勝の最多記録を打ち立て幕内出場1444回、幕内在位107場所も史上単独1位▼69連勝し安芸の海に敗れた名横綱・双葉山や羽黒山と「立波三羽ガラス」と持て囃された名寄岩は、40歳過ぎまで相撲を取り「名大関」とされたが、同じ立波系統の魁皇にも、この名誉ある名称を贈ってもいいのではないか。体調が悪いと朝稽古を休む関取が多くなっているが、この力持ちの力士は、場所が始まると、すり足と四股を踏み、ぶっつかり稽古に励む▼この鍛錬が実を結び新記録となったのを忘れまい。魁皇は記者会見で「最高の相撲人生だった」とにこやかに語ったが、土俵に満開の花を咲かせた息子を惜しみ、一番喜んでいるのは母・栄子さんで「寂しいけれども、ほっとした」と話すお袋の言葉が何ともいい。(遯)

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