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日本移民110周年は目前だ! (連載3)=地方と都市の2頭体制に

マリリア市にある三笠宮同妃両殿下が訪問した事実を刻む金属プレート(梅崎嘉明さん提供)

マリリア市にある三笠宮同妃両殿下が訪問した事実を刻む金属プレート(梅崎嘉明さん提供)

 振り返れば、終戦直後の勝ち負け抗争において、最も死傷事件が多発したのは、マリリアからオズワルド・クルースに至るパウリスタ沿線だった。軍曹が汚れた軍靴を日の丸でぬぐった目撃談の真偽を糾すために、青年らが立ち上がった「日の丸事件」は1946年1月にツッパンで起きた。これが発端だ。そして同年3月のバストスの溝部殺害、5月のバストス連続爆弾事件、7月オズワルド・クルース市民騒乱までひっきりなし▼汎マリリア50年祭委員会の瀧谷芳三委員長は58年、三笠宮さま歓迎の挨拶として《ブラジルに住みついた私たち移民の本当の姿をご覧になられる為にこの奥地まで御光来くださいました事は、私たちの終生忘れ得ぬ喜びであります。顧みますれば、この地に移住してから五十年、ふみ越えてきた幾多の困難辛苦も、今日の両殿下のご訪問によってすっかり拭い去られて余りある感じが致します》(同『三十年史』77頁)と万感の想いを込めて語った▼戦後「勝ち組=狂信者」的な言い方がされることが多かった。だが実際には、彼らがいたからこそ日本語教育が続けられ、日本舞踊や日本の音楽が幅広く愛好され、日本食がブラジル社会に広められてきた部分が強い。勝ち組がいなかったら、今の様に日本文化に関心を持つ日系子孫は残らなかったはずだ▼終戦から70年も経った。勝ち組が果たしてきた役割も認め、勝ち組も負け組も同じコロニアの一部であり「共に戦後盛り上げてきた」と再認識しても良いのではないか。もし60年ぶりにノロエステ線、パウリスタ線を皇室がご訪問される機会に恵まれるなら、いまだに勝ち負けに分かれている地域は、過去の怨恨をもう一度「すっかり拭い去」りシコリを解消したい▼勝ち負けの影響で当時10代だった二世世代に、日本文化離れの方向性を植付け、その世代がいまの日系団体の幹部の多くを占めている。汎パウリスタ連合会は1968年当初には17都市で始まり、17の日本語学校があったが、今世紀には14校に減り、2010年現在で4校になってしまった。地方の再活性化を考える時期だ▼地方取材を重ねる中で感じるのは、日系社会の根っこは今も地方にある点だ。地方日系団体が抱える問題点や雰囲気と、大都市の主要団体が持つそれとは大分、感触が異なる▼地方部では、日本移民史の現場としての「本物性」、日系文化への強いこだわりや気概を感じる。逆に大都市の日系団体、特にサンパウロ市文協には、ブラジル社会のエリート層に食い込み「やるべきことはやった」と人生を満喫した日系人が多く幹部におり、その分、日本的なものへのこだわりが薄い印象を受ける。「積極的に日系文化を創造・継承する」というより、「いずれなくなる」という雰囲気を感じる。良し悪しでなく、どちらも必要な方向性だろう▼ならば、大都市の日系団体を日系社会の中心と考えるのをやめ、地方文協群との2頭体制にした方が、時代を超えた日系文化が残る気がする。消滅の危機に瀕して生き残りを真摯に模索し、「日本文化継承・移民史の現場」にこだわる地方部日系団体と、「ブラジル社会への統合、社会上昇」を軸とした都市部文協という2軸に、今後のコロニアの方向性を再編し、両者が切磋琢磨しながら日系社会の人材を輩出していくようになれば理想的ではないか。そのためには、地方部が連絡を密にする場が必要であり、それが「サンパウロ州日系地方団体代表者の集い」だと感じる▼ボツカツの坂手實さんは5月の「第2回サンパウロ州日系地方団体代表者の集い」でこう言った。「父から『お前はブラジルで生まれたのだから〃良きブラジル人〃になれ』と繰り返し言われてきた。今の政界混乱や汚職を思えば『良きブラジル人』とは『日本文化を残した日系人』だ。特質を継承した日系人であることで、よりブラジルに貢献できる時代になった」。この言葉を忘れずにいたい。(つづく、深)

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