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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年7月28日付け

 東日本大震災の復興への願いを込め、ブラジル人歌手イヴァン・リンスが日本語で「上を向いて歩こう」を歌い、一部で話題となっている。ジャズ調の切々とした歌声が内容とあいまってなかなか心に染みる。「何か日本の歌をおうではないか」とカラオケで外国人に肩を組まれたら、世界中で「SUKIYAKI」として知られるこの曲しかない▼イギリスのレコード会社の社長が日本での契約のさい、食べたのがすき焼きだったのが命名の理由だとか。歌はさておき当地ではコロニアのおかげで食べる方が人気だ。先日、陶芸家の本間秀子さんらが開いた「SUKIYAKI・DO・BEM」も盛況だったようだし、サウーデ文協も毎回400食を売り上げる。ただ食べ方は首を傾げざるを得ない。鋤のうえで焼いたから、という一説はさておき、好きなように食べるからすき焼きというスタイルはブラジルらしいが▼とはいえ、かの北大路魯山人は、一般の食べ方を「ごちゃ鍋」と呼んで蔑んだようだ。砂糖を使わず、「素材の味を殺す」から卵ではなく、大根おろしで食べる分だけ焼いて食べたという。映画監督小津安二郎は、カレー粉を入れたものが好みだった▼それと知らずに俳優の池部良が「甘すぎてまずい!」と酷評するのを聞いて封印した話は有名だ。小説鬼平犯科帳では「五鉄」の軍鶏鍋が美味そうだ。その描写が冴えるのもさもありなん、作家池波正太郎は、レバーや皮も入れた鳥のすき焼きを好んだとか▼まだまだ寒い。家族や仲間と肉をつつき一献傾ける夜もいい。上を向いて歩けるのも美味いものを食べてこそだ。(剛)

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