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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年5月14日付け

 ニッケイ新聞が先月刊行した百周年記念写真集『百年目の肖像』を手に取ってパラパラと頁をめくった人の大半が、オッ!と驚いた感じで目を止めるのが、サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポス市に建てられた鋼鉄製の大鳥居の夜景写真だ。なんともいえない偉容を感じさせる不思議なデザインだ▼先日、汎パライバ連合会の菅野鉄夫会長にその裏話を聞いた。まず「日系非日系関係なく、とにかく、いろんな人が手弁当で協力してくれた」と感謝する。同地では、百年祭への参加意識を高めるために一人十レアル寄付運動をまずやった。相当の非日系、日本の日本人を含む四千人近くが参加したというので大した動員力だ▼なかでも、普段は飛行機などの設計をしていると思われるCTA(空軍特別航空技術総司令部)の専門技術者が、相当の日数を費やして無償で鳥居の設計したとの話は驚かされた。現代美術のような趣があると思っていたが、むしろ先端技術が集約されたアートだ。菅野会長は「格安で建立できた」というが、それでも六十五万レアルはかかっているというので、半端ではない金額だ▼高さ約十八メートルもあり、柱の部分の中が空洞で上ることができ、上部構造の清掃など簡単にできるようにするなど、デザインだけでなく、機能性も考えたハイテク設計だ。まさに、日本にはない独自な「ブラジル鳥居」と言えそうだ。南米大神宮の逢坂和男宮司も「あの鳥居は立派。日本に誇れるもの」と喜んでいた▼鳥居一つにも色々なドラマが秘められている。まして全伯各地で行われた百周年事業には、どれだけの秘話があったことだろう。 (深)

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